2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

木魚歳時記第4227話

ここにもおそろいの院の門院も高倉天皇の中宮も、ともに平氏の出であり、特に中宮は形式上院の姫君という皇女の資格で旧貴族たちの反対を押し切っての入内であるが、そういうことも敢えてしたほど、この当時は、内実はともかく表面上は院と平家一門との提携…

木魚歳時記第4226話

四月の四日から三日間にわたって、東山御所南殿、俗にいう法住寺殿で(賀式は)挙行された。 第一日の四日は儀式で、これは一種の法会の形式によって、院の皇子たる仁和寺の守覚法親王の臨席によって行われた。(佐藤春夫『極楽から来た』)883 虎つぐみする…

木魚歳時記第4225話

院は年が早く明け春になるのを待ちかねて、翌年の早春から、寵妃のため有馬の湯にご同伴あらせた。そうして三月末には四月はじめにおん催しの上皇五十のおん賀のため都に還御あらせた。 五十賀、六十賀は当時から一般に広く行われたものであったが、さすがに…

木魚歳時記第4224話

(三)院と門院とは予定のとおり四新涼とともに熊野詣でから還御(かんぎょ)あったが、この一夏の草枕はおん壮齢の門院にさえ過重なる努力であったと見えて、その疲労は都にお帰りの後も久しく抜け切れなかった。後にして思えば、これはただの疲労ではなく…

木魚歳時記第4223話

「幸なの里や」といったものであった。 京極殿は俊成の女、隆信の異父妹で、もと俊親の妻であるが、寵臣俊親が院の寵姫山城守教の女を賜って以来、去られて久しく別居だから、この時の「幸なの里や」の一句は当座一場の座興か、往年の恨みの片鱗かは知らない…

木魚歳時記第4222話

つづいて、 夜もふけ、小夜もとかや、われまつ里も 別当成親の声が美しく歌い終わった時、女房京極殿は院と門院とのおん前をもはばからず、成親の歌につづけるように、(佐藤春夫『極楽から来た』)879 川鵜来て小魚どつさりさらひけり 「ボクの細道]好きな…

木魚歳時記第4221話

鵯(ひよ)合せの翌年の秋九月の夜な夜な法住寺殿の広御所で今様合せが行われた。これは鵯合せの時のような反目の気分もなく一同しめやかに息をころして聞き入っている。 秋の夜明けなんとすなにがしの西に と歌い終わったのを、感じ入った様子で聞いている…

木魚歳時記第4220話

この清宗を院は日ごろから愛撫していらせた。その後十年、寿永(じゅえい)二年四月五日、頼盛が権大納言になった時、十三歳の清宗は、この大叔父のくことして公卿の列に入り花やかな人生の門出と見えたが、同じ年の七月には一門の人々とともに都落ちして行…

木魚歳時記第4219話

「飼い主と同じく、ごく地味に勝ったね」 と仰せられると、門院はにこりと皓歯(こうし)を見せて院とお目をお見合わせあった。 その院のお膝には、宗盛の子の清宗という今年三つの稚子が、おとなたちの見ものに相屈して眠ってしまっていた。(佐藤春夫『極…

木魚歳時記第4218話

院の近臣、中将藤原光能(みつよし)の鳥を合わせた時、どちらの鳥も声を出さない。もうこれはやめて引っこませようという時になって、やっと鳴いて、ただ一声で勝ちとなった時、院は門院に対して、(佐藤春夫『極楽から来た』)875 ひさしぶりうまいもん屋…

木魚歳時記第4217話

右の組では幕をおろして見向きしないで、急に院がいつものごひいきと若という遊女を呼び出しにやった。この白拍子(しらびょうし)には、この日鼓を打たせてだけで、ほかのことをはおさせにならなかった。(佐藤春夫『極楽から来た』)874 大堂に黒如の僧や…

木魚歳時記第4216話

この日の勝負には美女の芸が賭けられていた。左は勝ったのにかねて用意があったからと右の組へ女舞を出した。美しく金にあかした有様を、貴賤一同は見とれていたが、いかにもこれ見よがしの振舞いに、(佐藤春夫『極楽から来た』)873 半裂の昼寝て夜に励む…

木魚歳時記第4215話

相手方の鳥の鳴き声を数えるために、右の組では榛(はん)の木の枝に金属製の鴨をとまらせていたのに対して、左の組では、松に藤の花を掛けて数取りをしていたのはおく折にかない、数を よむにもしなやかに気が利いていると、この方の評判がよかった。(佐藤…

木魚歳時記第4214話

左のこの有様に対して、右は皮のついたままの丸太小屋で、これは殿上人の組であったが、小ざっぱりした舞人の装束であった。(佐藤春夫『極楽から来た』)871 寺の子の綽名は坊主烏の子 綽名(あだな) 「ボクの細道]好きな俳句(1957) 岡本 眸さん。「音…

木魚歳時記第4213話

世を憚(はばか)り、かねて人目につかぬ催しにしたいというご内意にもかかわらずこの様子である。特に六波羅組というべきこの組の頭になっていた重盛の服装が金銀を用いたものであったので、院からおたしなめがあった。(佐藤春夫『極楽から来た』)870 老…

木魚歳時記第4212話

左の組は詰所として赤地の錦を平らに張った幕屋ですばらしいものであった。詰所ばかりでなく、この組の人々はみな装束も非常に華美を競うていた。 佐藤春夫『極楽から来た』)869 悪いけど蟹の脱皮を見てしまふ 「ボクの細道]好きな俳句(1955) 岡本 眸さ…

木魚歳時記第4211話

(二)鵯(ひよ)を飼うことが当年の流行で、しれを集めて、左右に分けて鳴きの数を競わせる鵯合わせの催しが院の南殿の寝殿南面で行われた。(佐藤春夫『極楽から来た』)868 もういちどかをりにひたり菖蒲風呂 菖蒲(しょうぶ) 「ボクの細道]好きな俳句…

木魚歳時記第4210話

その時四十日のおん徒歩の後、門院が本宮の社前で、山中の豪雨にもめげず胡飲酒(こんじゅ)の舞を奉納のことは既に記した。(佐藤春夫『極楽から来た』)867 五月晴ベンチに残る傘一本 「ボクの細道]好きな俳句(1953) 岡本 眸さん。「立冬の女生きいき両…

木魚歳時記第4209話

巌島御幸の年の秋九月一日から十五日まで院では今様(いまざま)合わせのお催しがあり、その前年の五月二日には鵯合(ひよどりあ)わせのおん遊びもあって、そのどちらにもおそろいでごきげんうるわしく居らせられた。(佐藤春夫『極楽から来た』)866 ざら…

木魚歳時記第4208話

上皇は還御の路を中国の仏教道場、書写山へお立ち寄り遊ばされた。 この時、宝算(ほうさん)四十八、門院は三十三であらせたが、かしこくもおん仲は世の常ならずおんむつまじくお見受けできるのであった。(佐藤春夫『極楽から来た』)865 この俺は鵺といは…

木魚歳時記第4207話

と、これは上皇のおん著『梁塵秘抄口伝集』(りょうじんひしょうくでしゅう)巻第十の一部であるが、これで拝見すると、上皇は非常にナイーブな一面のあるお方のようである。側近に乗ぜられたのもこの一面のためではないだろうか。また法然と相好かったのも…

木魚歳時記第4206話

四大声聞(しだいしょうもん)如何ばかり 欣(よろこ)び身より余るらん 我らは後世の仏ぞと 確かに聞きつる今日なれぞ とこう歌ってから、あとを付けよといったが資賢は居なくなってしまって、付けることもしないので二へん繰り返して歌ったことであった。…

木魚歳時記第4205話

といわれたが、あまりの晴れがましくて、それに日中ではあり、すぐには歌い出せないでいるとなお度々というので、資賢(すけかた・共人の歌う者か)を呼んで歌えと命じたが、これも固くなっている。神のご宣託をが重ねて聞かせとあるので、今は是非なく歌う…

木魚歳時記第4204話

公卿、殿上人、楽人、太政大臣、その従者などまだ席を立たずにいると、霊験のある巫女(みこ)をという老女をつれて来た人があって巫女の宣託に申すよう。『我(この神)に申すことは必ず恊(かなう)うであろう。後の世のことをいわれるのがお好みの神であ…

木魚歳時記第4203話

その国の内侍(ないじ)ふたり、黒と釈迦という名である。唐装束をし、髪をあげて舞をした。舞いは五常楽(ごじょうらく)と駒鉾(こまぼこ)であった。天上の伎楽に菩薩たちが袖を振るのもかくやと思われて、めでたかった。(佐藤春夫『極楽から来た』)860…

木魚歳時記第4202話

木々はみな青々の見渡され、山に畳まれた岩石を切り、水際に白く高く積み上げられている。白い波が時々打ちかかる。はなはだ愛(め)でたく、思ったよりもおもしろく見える。(佐藤春夫『極楽から来た』)859 花いちご今日一日をありがたう 「ボクの細道]好…

木魚歳時記第4201話

「三月十六日に京を出て、同じ月の二十六日に到着した。宝殿のさまは、回廊が長くつづいているところへ潮がさして回廊のところまで満ち満ちて来る。湾の向こうには浪が白くあわぎ流れている。(佐藤春夫『極楽から来た』)858-2 面がまへおやじそっくり蜻蛉…

木魚歳時記第4200話

第十九章 哀歓無常(一)法然が専修念仏をはじめたのは、安元(あんげん)元年(西暦一一七五)春であったが、その前年の春、建春門院御同道で、前年経ヶ島を築いた摂津福原の清盛の別荘に御幸あり、つづいて太政大臣清盛を案内役にして、「安芸の厳島へ、建…

木魚歳時記第4199話

そのなかに「・・・其の儀無シ、法然房ハ子息ヲモチタリナシト人云イケレドモ常ニ存スルトコロハ浄行ノ僧也法連房(法然の弟子信空のこと)又勿論浄行也・・・」の句が見えることで当年のそんなうわさが知れる。(佐藤春夫『極楽から来た』)857 生みつけて…

木魚歳時記第4198話

佐藤春夫『極楽から来た』) お休み 太古より深泥を分けて水草主ふ 「ボクの 細道]好きな俳句(1942) 岩淵喜代子さん。「立冬や浮き上がりさうな力石」(喜代子)力石は、安産の為とはかぎらないようですが、あちらこちらの神社に置いてあります。 さて、…