2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

木魚歳時記第4274話

都にいては暗殺されないとも限らぬ情勢だから遠国に送るのは彼らの安全を図るゆえんであり、一定の年限は立ち回るのを禁じたのも同じ配慮で、この処置は考えた側に立てば、これが考え得る最大の恩恵に相違なかった。(佐藤春夫『極楽から来た』(931) 秋雨…

木魚歳時記第4273話

衆徒の手に渡されてその私刑に惨殺されるにくらべれば、彼らを東国に流すのは精一杯の処理でこれ以上の温情は山で認めない。(佐藤春夫『極楽から来た』)930 野仏の台に宿る秋の風 台(うてな) 「ボクの細道]好きな俳句(2014) 池田澄子さん。「春日遅々…

木魚歳時記第4272話

(二)東国に流されると決定の不幸な二人を慰めるために朋輩のうちの親しい者たちが、樋口富の小路に知人の営む宿に集まって送別の酒盛りをはじめていた。主客十人あまり、やや広い部屋にぎっしり集い、別に送られる二人の情婦もまじって酒間をあっせんして…

木魚歳時記第4271話

重盛は専ら衆徒と談合して、二人の兵を山に渡さないで、院もしくは、朝廷で衆徒の満足するように処理すると宗徒をなだめて、死刑一等を減じて、流刑ということで衆徒たちを納得させたのも重盛の徳望と平家の権勢とのためであった。(佐藤春夫『極楽から来た…

木魚歳時記第4270話

これは容易ならぬ一大事である。山は今や院の一敵国として現れた。もし山の要求を容れることは、やがて国権をみだすことになる。(佐藤春夫『極楽から来た』)927 箱庭に砂糖で造る礼拝堂 「ボクの細道]好きな俳句(2011) 池田澄子さん。「嘆きとかアイス…

木魚歳時記第4269話

しかし、山では神輿を射て神域を冒し衆徒を殺した二人を禁獄では承知せず、三宝の敵を山に渡せと迫った。山ではこれを私刑にしようとしている。(佐藤春夫『極楽から来た』)926 雷鳴や神は河川をさかのぼる 「ボクの細道]好きな俳句(2010) 池田澄子さん…

木魚歳時記第4268話

それには第一に衆徒の要請を容れることである。是非なく師高を尾張に配流し、神輿に射かけた重盛の郎党二人を禁獄して事に一段落をつけようとした。(佐藤春夫『極楽から来た』)925 天涯にあ。うんと咲きし朴の花 朴(ほう) 「ボクの細道]好きな俳句(200…

木魚歳時記第4267話

神輿を置き去りにするのは衆徒ら最後の切り札的常套(じょうとう)戦法で、これにはいつもみな辟易(へきえき)した。畏(おそ)るべき神輿の取り扱いに粗相があってはならない。これは一刻も早く引き取ってもらわなくては困る。(佐藤春夫『極楽から来た』…

木魚歳時記第4266話

神輿を押し立てて向かい来る衆徒に対して、重盛の軍は善戦した。さんざんに射かけた矢は二、三の僧兵を殺し神輿にも突きささった。この思い切った奮戦に恐れをなした衆徒は得意の白兵戦にも及ばず神輿を二条の路地に捨て、先を争って逃げ去った。(佐藤春夫…

木魚歳時記第4265話

院は平重盛と源頼政とに命じて宮門を固めさせた。頼政が言葉巧みに持ちかけて徒衆を重盛の守る陽明門に向かわせたのはこの時の事である。(佐藤春夫『極楽から来た』)922 老いてなほカンナの赤に嵌りけり 嵌(はま)り 「ボクの細道]好きな俳句(2006) 池…

木魚歳時記第4264話

というのは、この藤原師高は院の寵臣で股肱(ここう)たる西光法師の長子で目代はその弟であったからである。延暦寺は院の処置を不満として山法師どもを繰り出させた。事を好む山法師どもは得たりとばかり、神輿(みこし)をかつぎ出してきらら坂を下った。…

木魚歳時記第4263話

湧泉寺からは本寺延暦寺に訴え出たから、延暦寺はこれを院に院に訴え出て、三宝(さんぼう)を無視する国司と目代との処分を要請したが、院では暴力宗徒を慰撫して、ただ目代藤原師経(もろつね)を備前にに流しただけですまそうとした。(佐藤春夫『極楽か…

木魚歳時記第4262話

相手は国司目代の舎人であった。彼と僧兵とは口論に激した末、僧兵は馬の尾を切り馬の脚をたたき折ったのを見て、舎人は逃げ帰り、国司の兵六百が来て寺に火を放ち焼き払った。僧兵の逆襲に目代は都に逃げ帰った。(佐藤春夫『極楽から来た』)919 炎天を象…