2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

木魚歳時記第4336話

一味は山城守基兼、検非違使惟宗信房(これむねのぶふさ)、同じく平佐行(たいらのすけゆき)、同じく平康頼、ほかに法勝寺執行俊寛、基仲法師、それに裏切り武者の多田蔵人行綱である。(佐藤春夫『極楽から来た』)987 かすかなる月の明かりと寝てしまふ …

木魚歳時記第4335話

行綱の密告から、西光の承伏(しょうふく)、そこで成親を捕えて「ほとんど面縛(めんばく)に及ん」だ。面縛とは、うしろ手に縛りあげて顔を人にさらさせることである。成親とてさすがにぺらぺらとは口は割らなかったが、西光ほどは立派な悪党ぶりではなか…

木魚歳時記第4334話

逮捕されて清盛の西八条邸に監禁され、きびしく糾弾されながらも、西光は一味への義理に決して口は割らない。しかし事が洩れたとあっては是非もないと、度胸のすわった男で、自白はしないが事実の否定もしない。 (佐藤春夫『極楽から来た』)985 僧正のへろ…

木魚歳時記第4333話

正しく時忠の豪語そのままの情勢は旧日の藤原氏に似るもので、天下衆人の怨府(えんぷ)でもあった。これを打倒する力のある者は山門でなければ院の側近あるばかり。 上皇御当人よりは側近が先に立って平氏打倒を謀るのを、上皇もこれを制止遊ばぬばかりか、…

木魚歳時記第4332話

彼らが主になって時々この山荘に来たり酒盛りの肴に平氏打倒を密議してしていた。「平氏にあらざるものは人に非ず」と豪語したのは建春門院の兄正二位権大納言時忠であるが、一族の知行は、日本六十六個国の大半に及び荘園は五百箇所と号し、高位顕官はみな…

木魚歳時記第4331話

彼は大文字山の南麓、鹿谷(ししがたに)に、山荘を持っていた。鹿谷の山荘は、平素は主も住まず、また人里の遠いままに、院の寵死臣たち、いつぞやは法然が隆信に肖像を写させた日、蓮華法院の法話の席上、上皇に陪従していた人々である。うわさを聞いた法…

木魚歳時記第4330話

(二)はじめは法勝寺の執行であったが、その落成とともに取り立てられて、蓮華王院の執行に変わった静賢法印というのは、信西入道の子である。 一たい信西には二十人あまる子沢山で、それが皆で気がよかった。このゆかりと才能とのために静賢法印は深く上皇…

木魚歳時記第4329話

最初から安請け合いに引き受けて置いて、あまり深入りせず機を見て寝返りの恩賞が目的でなかったかととも疑える。というのは、いよいよという段になって福原輪田の浜の清盛別邸へ自分から密告に出かけたからである。何にせよ、西光法師はおかげで、すぐ捕え…

木魚歳時記第4328話

それを幸いと転がり込んで蔵人になりすました行綱はもともとあまり清廉(せいれん)の士ではあるまい。長袖者と法師ばかりで兵力がほしいと、弓矢の袋の材料にする宇治布三十反で買収されて一味に加わったというが、そう安っぽくあぶなっかしい一揆に兵を嫁…

木魚歳時記第4327話

八条院は鳥羽天皇の皇女で、院に匹敵する荘園を持ちながら常に貧乏していた。というのは、皇女だけにすこぶる大様な、もしくはだらしない経営ぶりで財宝などは人々の意に任せ持ち出させて蔵には塵埃ばかり、家人なども、すこしでもゆかりの者はどんどん転が…

木魚歳時記第4326話 

しかし、この陰謀がまたしても頼政の一味たる多田蔵人行綱の裏切りによって発覚した。その結果として、院の有力な寵臣が一網打尽となったのは院の無力な寵臣たる頼政には思うツボであったかも知れないが、これまで頼政のせいとすることもできまい。由来、裏…

木魚歳時記第4325話

明雲を奪還されて大事のあっさり去ったのを知った院方は、今さら明雲を殺すともせず、彼は山をおろして蟄居(ちっきょ)させたままで、今は僧兵団の力を借りず、非常手段で、直接に平家の覆滅に乗り出した。(佐藤春夫『極楽から来た』)976 妻恋へば転んで…

木魚歳時記第4324話

しかし頼政は決して清盛の考えたように清盛に味方したわけではない。彼はただ叡山僧兵団をして平家を打倒させたくなかった。自身の手で平氏を打ち平家の権力をそっくりわが手に収めたかったのだと後に思い当たる。(佐藤春夫『極楽から来た』)975 老僧の甚…

木魚歳時記第4323話

さればこそ古来例もない天台座主の流刑を断行し場合によっては殺してもとい強硬な態度にも出た。まさk、この策謀に気づかぬ頼政でもなかったろう。否、それを知ったればこそ、部下にいいふくめて置いて、座主をやすやすと大衆の手に渡させたのではあるまい…

木魚歳時記第4322話

それ故、明雲を流して、後に覚快法親王を座主に据え、上層部を一新して大衆とも融和を図るお膳立てが院であはできていた。 こうなれば山は上皇のおん弟を座主として自然と院と山との連合も成立して僧兵団の武力を以てすれば院の一大敵国たる平家打倒も決して…

木魚歳時記第4321話

当時、叡山は座主明雲をはじめ上層部すべて平家と気脈を通じていたが、大衆は必ずしも平家に与(くみ)するとは限らず、かえって学侶対する階級的反感から上層部に反対する動きさえ見せてた。(佐藤春夫『極楽から来た』)972 木枯しに唇ひらきたる山猫亭 唇…

木魚歳時記第4320話

第二十一章 清盛の応戦 (一)白山事件は見かけは大した事もない騒ぎのようであるが、実は、院と平家と山門と鼎立(ていりつ)の実情をはっきりと見せ、また院と平家との山門僧兵団の争奪を意味するものなのである。(佐藤春夫『極楽から来た』)971 仏壇へ…

木魚歳時記第4319話

山門討伐の命を逃げた清盛は、及公(だいこう)が出ないで院はさぞ困るだろう。誰が何をするかと見ていると、派手な宣伝を始めたのを不思議と詮索するうち、意外な事が知れ、六月一日の未明僧信西を逮捕した。鹿谷(ししがたに)の陰謀の発覚である。(佐藤…

木魚歳時記第4318話

そのために西光と相結んで受領級の貴族や検非遺使や適当な武士や有験(うげん)の僧などを一味として、ひそかに打倒清盛党を結んでいた。 かねての勢力を以て、山門に向かう形で山から逆落としに六波羅に向かおうというのである。(佐藤春夫『極楽から来た』…

木魚歳時記第4317話

当年三十八歳正二位権大納言どまりの成親に対して、重盛はじめ平家の一門がどんどん彼を乗り越して官位を進める清盛のその計らいが気に食わない。清盛を倒して政権を握りたいのが彼の野望である。(佐藤春夫『極楽から来た』)968 さつきから行ったり来たり…

木魚歳時記第4316話

こういう重縁の間柄の平家である。だから成親が平治の乱に、妹婿の信頼に味方して罪されるべきところを重盛に助けられている。その他平家の恩恵を受けることは少なくなかったが、それが多ければ多いほど彼は平家、特に清盛に対しては反感が多く、いつも対抗…

木魚歳時記第4315話

成親は鳥羽法皇第一の寵臣といわれた家成の子であるが、父家成の門へは清盛が若いころから従僕(しもべ)みたいに出入りしていた。そういう関係から清盛の長子重盛は成親の妹を主人筋の女(むすめ)というので、迎えて妻とし、そうして重盛の長子惟盛が成親…

木魚歳時記第4314話

そうしてその首謀者は自身で大将を買って出た成親なのであった。 これは例の今様合わせで旧妻京極殿をして「幸いなの里や」といわせた人物であるが、故あってかねがね平家覆滅の悲願に燃えていた。(佐藤春夫『極楽から来た』)965 花むくげ御空は青くしんし…

木魚歳時記第4313話

六波羅とても常備の兵力は多寡(たか)が知れたものである。短兵急に虚を突いて火でもかければ、平家の覆滅も案外、手もないものというのが、西光法師の作戦なのである。(佐藤春夫『極楽から来た』)964 お坊さまここよここよと墨とんぼ 「ボクの細道]好き…

木魚歳時記第4312話

そうして以上の四項目ばかりでなく院の山門討伐の事まで、声を大にして宣伝しはじめた。こな宣伝で威嚇される山門でもないことはよく知っている。しかし、これには別に目的があったので、山門討伐の名によって兵を集め兵を挙げて、六波羅を襲撃しようという…

木魚歳時記第4311話

一身上の都合により「休刊日」とさせて頂きます。

木魚歳時記第4310話

すべて山門に対する対策で、いずれも強硬なものであるが、さらに驚く可く気の強いことには、常備の兵力もない院が長袖の別当成親を大将にして山門を討伐させようとしているのであった。(佐藤春夫『極楽から来た』)962 まくなぎに一匹分の重さかな 「ボクの…

木魚歳時記第4309話

三に、近江、美濃、越前,三ヶ国の武士の注申を国衙(こくが)に命じる。もちろん、非常の場合近国の兵を召集するためである。 四に、僧綱らを山に登らせて大衆に明雲を院に還すことを説かせ、また謀反の理由を明らかにさせる。(佐藤春夫『極楽から来た』)…

木魚歳時記第4308話

(五)窮地に立った院でも、対策を立てないわけにはいかぬ。その要領をいえば、一に、兵器を帯して都内を往還の輩はこれをからめ取る可し。 二に、台嶽(比叡山)の末寺、荘園を、諸国司をして注進せしめる。(佐藤春夫『極楽から来た』)960 ぎんなんをくさ…

木魚歳時記第4307話

当然に山門は再び不穏となった。上皇は福原に居た清盛を急遽召し、この機に両者の傷つくのを期待して、山門の討伐を命じた。しかしその手に乗る清盛ではない。彼は明雲とは相提携していたし、山門と戦う事の不利は百も承知している。病中と称して院の命には…