2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

木魚歳時記第4305話

当時頼政が伊豆を知行していたため、明雲の追立使者(護送)を命じられていたが、特に山徒に備えよとのお達しも、また頼政にその心づかいなく、郎党ただ二名をつけて置いただけであったために、この始末であった。(佐藤春夫『極楽から来た』)958 炊き立て…

木魚歳時記第4304話

事を知った山の大衆は、西光父子を呪い罵(ののし)り、全山大講堂に集会して合議するところがあったが、二十三日に明雲が粟津を通るころ、宗徒らは道にこれを要し、奪って山に帰った。(佐藤春夫『極楽から来た』)957 ざくろ裂くこのメタファーな女人伝 「…

木魚歳時記第4303話

また朝臣の一部にも天台の座主、顕宗の棟梁を惜しみ法皇受戒の師であるからと流刑を不可とする意見もあったが、上皇は耳をかし給わず、敢然と、二十一日明雲を還俗せしめて藤原松枝と呼ばしめて、この夜直ちに、剣非違使(けびいし)に引かせて白河の宿坊を…

木魚歳時記第4302話

そこで謀反の罪名によって、明雲の所領は悉く没収し、一身を伊豆に流配することにした。山門の僧は法住寺殿に参じて、山門の不信を告げ、明雲の免罪を請い奉った。(佐藤春夫『極楽から来た』)955 八朔や酒の香りと花嫁と 八朔(はっさく) 「ボクの細道]…

木魚歳時記第4301話

仔細聴聞のため参陣の許可があった場合は、僧綱(そうごう・山中の政務をとる僧)所司みが参って言上すべき先例を無視して、大衆を宮門に派して官兵を刀傷し内裏に闖入(ちんにゅう)を企て、あまつさえ都内に火を放たしめるなど強訴(ごうそ)の域を越えて…

木魚歳時記第4300話

さて明法博士をして罪名を考えさせると、博士は先ず、故快修の座主時代、明雲が山内の悪僧らと語らって快修を逐(お)い自らこれに代った事実から数え、また嘉応元年にも、山門の所領美濃比良野庄民が訴訟を起こした時も山中の狂徒を発して宮殿に乱入せしめ…

木魚歳時記第4299話

上皇は明雲の罪すべきを思(おぼ)して、これを取り調べさせた。明雲は厳しい拷問を受けたらしく両三日は飲食も通ぜず、数日後の五月十五日にはついに絶え入って仮死状態になったので山門一同の愁訴もあり取り調べを打ち切った。(佐藤春夫『極楽から来た』…

木魚歳時記第4298話

(四)西光父子の申し立てによると、この事の真因は加賀国にあった寺領で座主明雲の領と称するものが、国領であることが明らかになったため、師高の国司在任中にこれを停廃したのを恨む私心の結果で、湧泉寺洗馬の事は名をこれにかるに過ぎないというのであ…

木魚歳時記第4297話

信西のゆかりによって院に仕えまつり、院の恩寵をえること一方ならぬものがあるのも、その才知と胆力のためであるが、今度は山の訴えで二人の子が二人まで、一人は備前、一人は尾張と流刑になったのを恨み、明雲を謀反人に仕立てて反撃に出で、衆徒どもに目…

木魚歳時記第4296話

と仰せられたので、西光はほぼわが意を達したと考え、それ以上に深くは云わなかった。西光法師は信西の最後まで仕えていて、信西がいよいよひとりで土中に隠れようという前に、「いっそ唐土までお逃げ遊ばしては如何でしょう。お供はさせていただきます」と…

木魚歳時記第4295話

「ふむ、よく考えてすみやかに明法博士を召し証拠を固めて明雲の罪状を考えさせてみるとしよう。何者にいたせ、さなくともこう恐ろしい夜に民の眠りをおびやかすことは憎いことである」(佐藤春夫『極楽から来た』)949 弦月の坊主めくりや真如堂 「ボクの細…

木魚歳時記第4294話

しかし西光の真意は別にあったのである。「わが君、この度の事件のかげには、どうも清盛がいて明雲の糸をひているように愚行せれます。今夜の大事とても、あるいは明雲が衆徒に命じたものかも知れたものではございません。もうこうなっては明雲はゆゆしき謀…

木魚歳時記第4293話

この夜西光法師は火に焼けただれた夜空の下を、わが身も吹き飛ばすかと、思うばかりの疾風の中を踏みしめ踏みしめ、いち早くも法住寺殿に向かって、法皇に火事のお見舞いを申し上げた。(佐藤春夫『極楽から来た』)947 断崖に不動明王山滴る 「ボクの細道]…

木魚歳時記第4292話

しかし真因は、前回で記したとおり、わが家の座敷で行われた奇怪な酒盛りの跡を湮滅(いんめつ)するために、わが家一軒を焼いてかかり合いを免れようとした宿の主人の非常手段が、神火ならぬこんな業火になってしまったのである。(佐藤春夫『極楽から来た…

木魚歳時記第4291話

あるものはその放火のひろがる前のころ、山から飛び出す緋色の大猿が、多数の小猿にに命じ手わけして町々にたいまつの火を移させると夢に見たなどと、まことしやかに伝えて者もあって、日吉の御神火などと呼んだ。(佐藤春夫『極楽から来た』)945 さまざま…

木魚歳時記第4290話

折が折であったから、さまざまな流言飛語があった。ある者は平家方の放火に違いないといい、ある者は院の西光法師の仕わざといい、または山が事件の処理に不満で衆徒をして火を放たせたなどともいった。(佐藤春夫『極楽から来た』)944 木下闇この世窺ふJ…

木魚歳時記第4289話

と『方丈記』に鴨長明が記したのは、この時白山事件の余波として、追放される重盛の部下二人の送別宴の席上の騒ぎが原因となって起こったものであった。(佐藤春夫『極楽から来た』)943 読点のぴたりと決まり風涼し 読点(とうてん) 「ボクの細道]好きな…

木魚歳時記第4288話

「火もとは、樋口富の小路とかや。舞人を宿せる仮屋より出で来たりけりなん。吹き迷う風に、とかく移りゆくほどに、扇をひろげたるごとく末広になりぬ。(中略)公卿の家十六焼けたり。ましてその外、数え知るに及ばず。すべて部のうち、三分の一に及べりと…

木魚歳時記第4287話 

(三)「去安元(いにしあんげん)三年四月二十八日かとよ。風烈しく吹きて、静かなりし夜、戌(いぬ)の刻(午後八時ごろ)都の東南より火出で来て、西南に至る。はてには朱雀門(すざくもん)、大極殿、大学寮、民部省などまで移りて、一夜のうちに塵灰(…

木魚歳時記第4286話  

一の馬が狂えば百の馬が狂う譬(たとえ)、隣室で一座の様子を見ていた宿の主は、遂に死人まで出た始末に、問題の人物に宿を貸したさえ大変なのに、死体までだしたとあっては、かかり合いは面倒と座敷へ飛び出し、燭の皿の油を明り障子に塗って、燭の灯を移…

木魚歳時記第4285話

「諸公のおん志かたじけない。おれはこんな筋の通らぬ国にはもはや住みとうもない。知らぬ他国の鬼に食われるより、わしは往生する。このとうり」 というより早く、神輿を射た者は首に刀を当て血まみれで座に伏し倒れていた。(佐藤春夫『極楽から来た』)94…

木魚歳時記第4284話

この狂態にならって我も我もと耳や鼻の餞別を出す。女たちは悲鳴を上げ、すそを乱して次々に血の漂う座敷から狂風の戸外へ逃げ出す。(佐藤春夫『極楽から来た』)939 台風の北西へ逸れ太平洋 「ボクの細道]好きな俳句(2024) 池田澄子さん。「胃は此処に…

木魚歳時記第4283話

と、突き出した皿には血のりのなかに盛り上がった耳たぶが一つあった。彼はおのれの片耳をそいで餞別にしたのである。(佐藤春夫『極楽から来た』)939 はこべらの熊がとつぜんおどりだす 「ボクの細道]好きな俳句(2023) 池田澄子さん。「おさなごの息が…

木魚歳時記第4282話

時に酔いただれた一人が妖(あや)しく笑いながら、「今の別れにはなむけせずにおられるか。だがおれには金も衣もないわ。さあこれでも肴にしてくれ。このきのこは珍重な味がしようぞ」(佐藤春夫『極楽から来た』)938 銀杏にクレオソートの匂ひかな 銀杏(…

木魚歳時記第4281話

泣くなと慰めて杯をすすめているうちはよかったが、悲しみと憤りとを忘れようと酒を浴びているうちに、怒りつ、泣きつ、わけもなく笑いつ、一座は険しい空気を醸しだして。戸外には夕方からの風が夜に入ってますます吹きつのり、わめき狂っていた。(佐藤春…

木魚歳時記第4280話

と、二人のうちの一人が涙を拂(はら)っていい出したのは、他の一人はもとより、一座はことごとく同感した。(佐藤春夫『極楽から来た』)936 仲秋の六角あたり京の臍 臍(へそ) 「ボクの細道]好きな俳句(2020) 池田澄子さん。「幽霊が写って通るステン…

木魚歳時記第4279話

(佐藤春夫『極楽から来た』)935 げっそりと湶浮かせて羽抜鳥 湶(あばら) 「ボクの細道]好きな俳句(2019) 池田澄子さん。「兵泳ぎ永久に祖国は の先」 (澄子) 「兵泳ぎ」とは? 2次大戦終了ご後、大陸に抑留された戦友たちのことでしょうか? さて…

木魚歳時記第4278話

相手は神輿(みこし)だからとは何事か。そんな尊いものなら、それを弓矢の場に持ち出さぬがよい。持ち出す以上は矢も刀も当たろうず。大将のように押し立てたから、大将のつもりで射かけたばかり、罪は一切山法師どもにある。(佐藤春夫『極楽から来た』)9…

木魚歳時記第4277話

悲しみは女々しく口に出さずにあきらめもするが、非情はやる方もない。「武者が敵に矢を射かけるのは当然のこと、射かけて当たるは手柄でこそあれ何の罰に相当する事か。(佐藤春夫『極楽から来た』)934 周山の鮎の塩焼きいただきます 「ボクの細道]好きな…

木魚歳時記第4276話

悲しみは女々しく口に出さずにあきらめもするが、非情はやる方もない。「武者が敵に矢を射かけるのは当然のこと、射かけて当たるは手柄でこそあれ何の罰に相当する事か。(佐藤春夫『極楽から来た』)933 新品のゴルフセットや桐の花 「ボクの細道]好きな俳…