木魚歳時記第4861話

 上人がいよいよ流罪と決まって、都を立たれる前夜を、兼実は、当時小松谷の房にいた法然を、法性寺のわが邸に招いて語り明かしたのも、ただ名残を惜しむばかりでなく、さびしい小松谷の御房では、この夜を最後の機会と狙う暴漢が、愛児良経にしたような凶行を演じるかも知れないという懸念のためであった。兼実はそういう神経質な人であったから、そこで兼実はこの一夜を上人と枕を並べて語り明かしながらも、上人の身をお護り申しているつもりであった。心細がる兼実に対して法然はさすがに安心があった。(佐藤春夫『極楽から来た』)

      蜩の畢竟空と澄みわたる 畢竟(ひつきょう)

 「蜩」(ひぐらし)は秋季となります。その鳴き声が「空」(くう)、つまり「澄みわる」のが魅力的です! ぼくは、子どもの頃、この「ひぐらし」を追って、御苑の遠くまで行った思い出があります! 俳句は『般若心経』の意(こころ)です! 好きな俳句の一つです!