木魚歳時記第4247話

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 第三日にはお召し替えあらせて、唐衣、表はもえ黄色で、青のむら濃(濃淡ある染め方)に色々な糸で丸く図案化された薔薇(ばら)を縫い取り、裳のひもはすおう色むら濃、打ち衣は紅のむら濃という豪華けんらんに会衆一同の目をそばだたせたものであった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)904

       門前をスキップで行くてんと虫

 「ボクの細道]好きな俳句(1989) 池田澄子さん。「どっちみち梅雨の道へ出る地下道」(澄子) 夕立ならともかく・・梅雨の頃は、地下道など、どの出口を探しても梅雨は避けるわけには行きません。これが、時雨なら「しぐるゝや駅に西口東口」(安住 敦)さんの作品があります。

  あなたあみだで、わしやなむで、
  みだにとられて、なむあみだぶつ。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編)

 

木魚歳時記第4246話

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 (五)建春門院はおん賀の第一日には紅の薄様(うすよう・上方濃く下を次第に淡くぼかしたあけぼの染め)のお召しものに、白い五重織り一かさねの唐衣(からぎぬ・大陸風仕立てで当年の婦人宮廷正装)に裳(も)のひもは赤地の錦で、それぞれに金銀の紋用(もよう)を置いたものを召されていた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)903

       ゆすら梅一つ寺の子食ひにけり     

 「ボクの細道]好きな俳句(1988) 池田澄子さん。「はつ夏の空からお嫁さんのピアノ」(澄子) 息子さんご夫婦と二所帯同居されているのでしょう。昔は、後継ぎとの同居は当然の事と考えて何の違和感も抱きませんでした。二所帯同居の場合はフツー息子夫婦が二階に住まうことになるのでしょう。どこのお家でも同じです「嫁さんのピアノ」に、万感、いろんな想いが走馬灯のようによぎります。

  をろくじ(御六字)わ、どこをきいても、
  ざんぎとかんぎ、
  こころやしなう、なむあみだぶつ。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編) 

 

木魚歳時記第4245話

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 清盛からは重盛の取次で中宮に道風筆の『古今集』を奉り、院からはこの賀に対する一族の尽力を多とする陰宣にそえて御使は白銀の箱に金百両を西八条の清盛別邸にとどけさせた。
 七日は雨天、人々はおん賀三日間の晴天を慶賀した。
(佐藤春夫『極楽から来た』)902

       そういえば蜆蝶も居た忘れてた  蜆(しじみ)

 「ボクの細道]好きな俳句(1987) 池田澄子さん。「春よ春八百屋の電子計算機」(澄子) 「電子計算機」とは懐かしい。あそらく「電卓」のことでありましょう。それにしても、当時、八百屋さんに電卓が置いてあったとは! さて、地球上の生命は文明が高度に発達した他の星から送りこまれて始まった。そんな説もあるようです。

  うれしや、うれしや、
  あくをとどめてくださり(つ)じひが、
  あなたのなむあみだぶつ。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編)

 

木魚歳時記第4244話

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 第三日の六日は、地下(じげ)の人々も多少加わって、半ば儀式、半ば遊楽の、賜餐や管弦歌舞に暮れた。当日は人々が立ち替って「青海波」(せいかいは)を舞ったが、これまた維盛が最上位とあって、父重盛は場所柄も忘れてうれし涙を流していた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)901

       天空は赤子のものやさくらんぼ

 「ボクの細道]好きな俳句(1986) 池田澄子さん。「短日の燃やすものもうないかしら」(澄子) 「燃やすもの」とは? 男性は、ポイポイ捨てるのが大好きです。五年間使わないモノは捨てようか? 身勝手な屁理屈をこねて処分します。女性は、なんでも、一応、留保しておかれます。ところで粗大ゴミそのものが消滅すれば? S氏のブログ『木魚歳時記』はまずネットから消えます(と思います)。

  なむわ、わたしで、
  あみだは、をやで、
  これがをやこのなむあみだぶつ。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編)

 

木魚歳時記第4243話

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 女房たちの船は御前の汀(なぎさ)に停めて置いて、ほかに遊びもがなとまりを取り出した蹴まりにも飽きてこれを納めたところで、船中の管弦はあたりにひびきただようていた。月のない庭の暗さに随身たちはかがり火をたいてこの日の遊びは終わった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)900

       寺の子の壁に描きたる夜光虫

 「ボクの細道]好きな俳句(1985) 池田澄子さん。「缶詰の桃冷ゆるまで待てぬとは」(澄子) 男は、どうして「がまん」ができないのか? なにごとにおいても! と、そう作者はおっしゃりたいのでしょう。そのとおりです。なにごろによらず、男はアホ「あかん」のです。

  さいちや、ごをんを、だれと、よろこぶ。
  あなたと、ふたり、
  まう(もう)ひとりや(は)、だれか、
  あとはゆわいでも、しれたこと。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編)

 

木魚歳時記第4242話

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 藤原氏や平家の殿たちも船中に召されて管弦を催す。御前の沖にさしかかると、御所のなかから中宮大夫はじめ人々が吹奏してこれに応(こた)えた。なかでは維盛の笛が上手である。主上はまた格別であらせるが。
(佐藤春夫『極楽から来た』)899

       亀鳴くや座敷童子のぽっつりと

[ ボクの細道]好きな俳句(1984) 池田澄子さん。「定位置に夫と茶筒と守宮かな」(澄子) 二人暮らしなのでしょう。そうなると、家の中で起こる出来事も決まりきった些細な小競り合いの繰り返しとなります(汗)。そうです、定位置に夫が居て、トイ面に茶筒が置いてあり、守宮(やもり)つまり、女郎蜘蛛サマが操っている・・さて「山奥の一軒家」(テレビ)は面白い。なぜなら、イノベーション(生産性の創造)だけではなく、住む人の「熱意と労力と時間」という味付けが込められているからです。

  みちはへだててをるけれど、
  ごをんよろこべ、あなたのごをん、
  ここでよろこぶ、なむあみだぶつ。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編)

 

 

木魚歳時記第4241話

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  昼になってから、船遊びにしようと中宮や院の女房たちをそれぞれの蔵人(くろうど)がそれぞれに船を仕立てて漕ぎ出した。船べりに色さまざまな袖口を並べつらねたのが目もあざやかである。
(佐藤春夫『極楽から来た』)898

       吹き抜けを真っ逆さまに青大将

 「ボクの細道]好きな俳句(1983) 池田澄子さん。「また春が来たことは来た鰐の顎」(澄子) 「鰐」(わに)といえば、その「顎」(あご)に特徴があります。しかし、よくぞこここまで作品に仕上げた! 作者の執念すら感じます。 俳句においては「韻」(いん)も大切な要素ですが、漢字の字面(じずら)から受ける印象も大事な要素です。さて「時計草」は、属名を「パッシュフロラ」つまり、「受難の花」と呼ばれるそうです。キリストの受難と関係するのでしょうか?

  ごをんよろこべ、なむあみだぶを。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編)