雪山童子
男が修行に努めていました。そこに鬼が現れ、その男に、修行の極意となる「諸行無常」(しょぎょうむじょう)「是生滅法」(ぜしょうめっぽう)の偈(げ)文を教えてくれました。ところで修行の男は、その二つの偈文につづきのあることに気づきました。そこで男は、鬼に、続きの偈文を教えてほしいと頼みました。ところが、鬼は「俺は、今、腹が空(す)いている。お前を食わせるなら教えてやってもよい」と。そこで男は、迷うことなく「教えてくれるならわたしをさし上げましょう。」と約束したのです。そして続きの「消滅滅己」(しょうめつめっち)「寂滅為楽」(じゃくめついらく)の偈文を教えてもらいました。そして鬼に身を投じようとしたそのとき、鬼に姿を変えておられた、帝釈天(たいしゃくてん)は、もとの姿に戻られ告げられました「あなたこそ仏となりたまう」と。(『比喩経』)
夜咄や弁天堂は薄あかり
雪山童子=修行時代の釈迦(しゃか) 帝釈天=インド古来の神 夜咄(よばなし) 写真:「西山 喬・由良展」より