木魚歳時記第4457話

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 この非常事で悪い年は暮れて、明くれば治承五年であったが、この新春は東国の頼朝の兵と南都の重衡の火とのために拝賀もご停止で主上のお出ましも音曲もなく、二日の宴酔もお取りやめであった。藤原氏の公卿は氏寺焼失のためみな引きこもっていた。
 そのさびしい正月の十四日、高倉上皇は御宇十二年、宝算わずか二十一歳で六波羅の池殿に崩御あらせた。
 上皇はおん心やさしい方で、おん父法皇には孝順この上なく、側近の臣たち下々一般までお慈悲深く末世に有りがたい君であらせたから、天下は上皇の崩御をいたみまつることは切実であった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)1106

      鳥帰る朝焼け雲に照らされて

 「ボクの細道]好きな俳句(2198) 京極杞陽さん。「ハンカチは美しからずいい女」(杞陽) 先に「シクラメンたばこを消して立つ女」(杞陽)の作品をご紹介しました。この「ハンカチは美しからずいい女」のモダニズム感覚に敬服します。

大切なことは、
たいていわかりきったこと。
わかりきったとは、
とかく忘れがちなもの。
(里見 弴)