木魚歳時記 第124話

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祭見の 群れ太らせて 牛車かな

美猴王(びこうおう)となる

 さて、天地の霊気と日月の精華をうけ、そして生まれた石猿ですが、そこいらの玄猿(くろざる)ちがい、たいした優れ者でした。

 昼は、花果山を達者に歩き、飛びはね、草木を食らい、流れや泉の水を飲み、山の花を集め、木の実をさがし、花果山に棲む<異類>たち、すなわち、狼と連らなり、虎と群がり、狡兎(うさぎ)をたぶらかします。そして夜になると水廉洞に帰って眠るという毎日です。
 ところでこの石猿は、ずばぬけた器量があり、その上「諸君、人にして信無くんば其の可なるを知らざるなり。」など、洒落たことをいうものですから、玄猿たちも、へへい、と恐れ入って石猿の仰せに従うようになります。
 こうして石猿は、自らを「美猴王」と名乗り、四、五千匹もいる玄猿の王となったのでございます。