木魚歳時記 第123話

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卯浪わけ 浦島還る 伊根港

石猿誕生

 さて、水廉洞(すいれんどう)に大きな玄石(くろいし)があり、或る日、これが、天地の霊気と日月の精華をうけ、心が通いあったのでしょうか、たちまち胎内に<仙胞>を宿したのでございます。
 やがて、この玄石は裂けると、中から手鞠(まり)くらいの<石の卵>が出てきました。それが真っ二つ割れ、一匹の石猿が飛び出したのでございます。そいつが風になぶられ、五官(耳・目・口・鼻・心臓)を備え、目から金色の光を放つなど、奇怪な行動をしたあと、毛むくじゃらの右手で<天>を、左手で<地>を指しながら「天上天下、唯我独尊」と大声で叫んだのでございます。
 この<石猿>の誕生こそ、この世で「我欲」というものが、どれほど恐ろしいものか…この世で「苦」の原因となるか…それを証明することになるのです。