水琴の 寂誘うかな みぞれ雪
形あるものはすへてこわれて行く
花のように 人のように 楼閣のように
されと形なきものは 大空の
やうに虚空のように壊れることを
知らない
形あるすへてを捨てた心 変り行く
すへてを離れた心 それか
空の心てある
みとりの大空のように 空の心は
限りもなく涯もない それは
増えもせず 減りもせず すへての
動揺を離れる 躓くことにも迷わず
たゝすへての恐れを離れる
若葉にしたゝる日の滴か すへてを
はくゝみ育てるように 空の心はすへてを
許し すへての命を育てる
それは限りなき喜ひてあり 朗らかな
静けさてある
澄み輝く 般若空の 心よ (小笠原秀實)