木魚歳時記第4251話

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 女院は既にまた起(た)たぬ身を自覚されたものか、女院号と、それに付随したさまざまな特典とをことごとく拝辞し、今はただ一介の女子として戒を受け、覚悟の程を示された。
(佐藤春夫『極楽から来た』)908

        山頂は極楽のごと風涼し

 「ボクの細道]好きな俳句(1993) 池田澄子さん。「茄子の擦傷死ぬまでを気の急きどおし」(澄子) 「茄子の擦傷」とは痛ましい・・それも、若いときに心の底に受けた傷は、年老いてからも心がうずきます。さて、人類初の宇宙飛行船(1961年)ボストーク1号から、船長ガガーリン少佐が発したことば、それは「それでも地球は青かった」でした。水の惑星(地球)行う宇宙開発への取り組みは、今、大きく変わろうとしています。

  よろこびはわ、せかい(世界)ほど、
  せかいにみちる、
  なむあみだぶつ。
  たのしみうける、をやのじひ。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編)

 

木魚歳時記第4250話

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 占いによって灸冶(きゅうじ)の可否をきめたり、蛭(ひる)に吸わせたり、化膿下したのを針でつっ突いたり、おぼつかなくももどかしい治療の手を尽くしたり、千僧の読経などの末に、それでも腫瘍の方は幾分ご快方のように見えたのに食欲の不振は、ご体力の衰弱を来した。
(佐藤春夫『極楽から来た』)907

     蚊遣火や色即是空ナムアミダ  色即是空(しきそくぜくう)

 「ボクの細道]好きな俳句(1992) 池田澄子さん。「わたくしに劣るものなく梅雨きのこ」(澄子) 「梅雨きのこ」とは、梅雨の頃に発生し、(本来の)食料としてほとんど使い物にならない茸(きのこ)類を指すのでしょうか? さて、梅雨の頃、毎年「絹傘茸」(きぬかさだけ)をネライ撮影に出かけます。諸条件というよりも運に恵まれることです・・今年も失敗しました’(笑)。ともかく絹傘茸のしたたかさに乾杯を !

  ねんぶつわ、ときのさいそく、
  なむあみだぶつ。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編)

 

木魚歳時記第4249話

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 それが五十日ばかり後に御発病があった。この玉のような女体は何か情熱よりも悪質な細菌の巣になったものらしい。全身の淋巴線(りんぱせん)が次々と腫れて治療の手もつけられない。
(佐藤春夫『極楽から来た』)906

       夏障子ひらきたちまち鳥の声

 「ボクの細道]好きな俳句(1991) 池田澄子さん。「風花やまばたいて瞼思い出す」(澄子) 「風花」は、雪が花びらのように舞うこと、つまり、美しい中に厳しさを感じさせる冬の季語です。さて、散歩するとき、息切れがします。外に出ると、写真という「おまけ」(被写体)と出会えますからうれしい。大自然という被写体は飽(あ)きることがありません。ありがままに被写体となって刻々と形を変えます。まさに「諸行無常」(しょぎょうむじょう)です。

  ごん、よろこびや(べば)、
  うきよ(浮世)はれる。
  はれるうきよも、なむあみだぶつ。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編)

 

木魚歳時記第4248話

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 そうしておん賀のめで。たく終わった時には特に使いを出してこの時の上卿(委員長)であった院の別当中宮大夫隆季にその労をねぎらうほどの行きとどいたお心づかいもあった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)905

       打ち水を草木にあげる何べんも

 「ボクの細道]好きな俳句(1990) 池田澄子さん。「颱風が逸れてなんだか蒸し御飯」(澄子) さて、蒸し御飯といえば、温めた「バラ寿司」が師僧(おやじ)の好物でした。四条寺町のお店まで、蒸篭「バラ寿司」を求めて買いに走りました、それともう一つ「痛い病気に罹りたくない」これが、師僧(おやじ)の口癖でした。お陰さまで、83歳(老衰)で天寿を全うしました。あいがたいことだと思っています。

  うれし(い)の、をもい(思ひ)だすときのねんぶつ、
  ごくらくで、これをたのしむ、
  なむあみだぶつ。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編)

 

木魚歳時記第4247話

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 第三日にはお召し替えあらせて、唐衣、表はもえ黄色で、青のむら濃(濃淡ある染め方)に色々な糸で丸く図案化された薔薇(ばら)を縫い取り、裳のひもはすおう色むら濃、打ち衣は紅のむら濃という豪華けんらんに会衆一同の目をそばだたせたものであった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)904

       門前をスキップで行くてんと虫

 「ボクの細道]好きな俳句(1989) 池田澄子さん。「どっちみち梅雨の道へ出る地下道」(澄子) 夕立ならともかく・・梅雨の頃は、地下道など、どの出口を探しても梅雨は避けるわけには行きません。これが、時雨なら「しぐるゝや駅に西口東口」(安住 敦)さんの作品があります。

  あなたあみだで、わしやなむで、
  みだにとられて、なむあみだぶつ。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編)

 

木魚歳時記第4246話

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 (五)建春門院はおん賀の第一日には紅の薄様(うすよう・上方濃く下を次第に淡くぼかしたあけぼの染め)のお召しものに、白い五重織り一かさねの唐衣(からぎぬ・大陸風仕立てで当年の婦人宮廷正装)に裳(も)のひもは赤地の錦で、それぞれに金銀の紋用(もよう)を置いたものを召されていた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)903

       ゆすら梅一つ寺の子食ひにけり     

 「ボクの細道]好きな俳句(1988) 池田澄子さん。「はつ夏の空からお嫁さんのピアノ」(澄子) 息子さんご夫婦と二所帯同居されているのでしょう。昔は、後継ぎとの同居は当然の事と考えて何の違和感も抱きませんでした。二所帯同居の場合はフツー息子夫婦が二階に住まうことになるのでしょう。どこのお家でも同じです「嫁さんのピアノ」に、万感、いろんな想いが走馬灯のようによぎります。

  をろくじ(御六字)わ、どこをきいても、
  ざんぎとかんぎ、
  こころやしなう、なむあみだぶつ。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編) 

 

木魚歳時記第4245話

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 清盛からは重盛の取次で中宮に道風筆の『古今集』を奉り、院からはこの賀に対する一族の尽力を多とする陰宣にそえて御使は白銀の箱に金百両を西八条の清盛別邸にとどけさせた。
 七日は雨天、人々はおん賀三日間の晴天を慶賀した。
(佐藤春夫『極楽から来た』)902

       そういえば蜆蝶も居た忘れてた  蜆(しじみ)

 「ボクの細道]好きな俳句(1987) 池田澄子さん。「春よ春八百屋の電子計算機」(澄子) 「電子計算機」とは懐かしい。あそらく「電卓」のことでありましょう。それにしても、当時、八百屋さんに電卓が置いてあったとは! さて、地球上の生命は文明が高度に発達した他の星から送りこまれて始まった。そんな説もあるようです。

  うれしや、うれしや、
  あくをとどめてくださり(つ)じひが、
  あなたのなむあみだぶつ。
  『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編)