木魚歳時記第4887話  

 人のよさが彼を一人前の悪漢にしなかった代わりに、同輩や後輩から常に愛すべき好漢として生活を保障されたのがかえって禍し、悪い仲間から生涯足が抜けなかった。
 今さら気をもんでみても仕方ないとあきらめ、勧めるままに旅の疲れをいいわけに早く床につくと、故郷に近く来て知人の家にいるというだけで眠りは安らかに翌日も春眠暁を知らず、ぐっすりと日三竿まで眠りつづけた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)

        滴りや焔青めく明王像

「滴り」は夏季となります。雲母坂(きららざか)から詩仙堂を経て曼殊院へと向かうゆるやかな坂に明王像はお祀りされています。おりからの集中豪雨に見舞われて! 明王像の焔(ほむら)が青白くゆらめいていました。