木魚歳時記第4763話
「極楽に待たんと思し召せ」とその死にの床に告げやったその人の今おわすその地のもの音を、法然はその我を待つのおもかげとともに、はじめて聞いたのである。
法然には極楽も、今は遙かな彼(か)の岸ではない。声さえ聞けるあたりの地のつづきであり、もと居た処なのである。?笛(れいてき)の音も宝樹に鳴る妙音な風声も、みなかりそめならぬ故郷のものの音と聞こえた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)1398
7 弦月や五臓たちまち覚醒す
五臓とは、もちろん、人間の大切な五つの臓器のことを指します。天を仰いで、その時に中空に輝く「三ケ月」を見たならば、はるばる日本よりの求道僧たちの胸をよぎるのはどのような思いであったのでしょうか? 弦月に犬の遠吠えが重なれば効果は十分です。ぼくは「三ケ月」の夜、うろついて犬に吠えられました(笑)。