木魚歳時記第4759話

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 「救われるぞ、蓮生。そなたはきっと救われるぞ。わしと同じように」
法然は再び云って行き過ぎた。熊谷の目に涙が湧いた。法然は熊谷が常日ごろ、学問部屋の聖光らが彼の知らない多くを知っているのを見て身の無学を恥じ、彼らをうらやみ、わが身を不安として学問の必要を切に思うのを憐れんだのである。
 熊谷はうなだれながら、あふれる涙をにぎり拳(こぶし)で拭いつつ頭をあげて、涙眼に朦朧(もうろうと)かすんで見える師のうしろ姿を見送った。
(佐藤春夫『極楽から来た』)1394

        3   極彩の十二神将鵙猛る 鵙(もず)

 神将(しんしょう)とは、釈迦(しゃか)による仏教が興る以前から、古代インドに伝わる神・神将(しんしょう)・勇者などを意味します。シャカの教え、すなわち、仏教に帰依するや、神将は、仏教の守護者と変わりました。西域・シルクロードに連なる「窟」(くつ)には、こうした神将・勇者の像が多く祀られていたことでしょう。ぼくも、新彊ウイグルにある「窟」を訪ねた時はその片鱗に触れた思いでした。