2013-12-20から1日間の記事一覧

木魚歳時記 第348話

春燈に 時を切り取る 刀疵 あの「寺田屋騒動」の顛末と、現在の「寺田屋」に残された柱の刀疵を見なければ、この俳句は成り立たない?その通りです。ぼくの俳句は、まだ、ストレート(直球)しか投げられません。しかも「ひとりよがり」なので困ります。 「…

木魚歳時記 第347話

水温む 十石舟の 浅舫 京阪電車「中書島」の界隈。宇治川の分流にある弁天橋から伏見港跡まで、十石舟が巡航しています。伏見(伏水)で醸した酒蔵が立ち並ぶ川面を進むと、また違ったか風景があらわれ、しばし時の経つのを忘れました。 「わがこぼす白き飯…

木魚歳時記 第346話

陽炎や 半落る 真田幸村 子どもの頃、『真田十勇士』に夢中になりました。とくに、猿飛佐助・霧隠才蔵・三好清海入道には胸躍らせたものです。もちろん、狸おやじ・家康に敢然と立ち向かう、知将・幸村への判官贔屓(びいき)もありました。知将とはいえない…

木魚歳時記 第345話

説法に 猫そっけなし 春彼岸 ぼくの顔は「しんきくさい」。それに負けず劣らず、お説教も「しんきくさい」。お檀家さんは、さぞかし我慢、辛抱かと思います。そんな彼岸説法の最中、野良が一匹通りすぎてゆきました。 「心は境界に随ひて流る。 鉄の磁石にお…

木魚歳時記 第344話

葉隠に ひよ高啼きて 紅椿 鵯(ひよ)はアクロバットが上手です。それと甲高い啼き声が・・・早朝、お掃除に出かけると、怪鳥のように椿の茂みから飛び出してぼくを驚かせます。早朝から密盗人を・・・ 「ああ、ぼくには今日が、 また、果てしなく青く、明る…

木魚歳時記 第343話

芽柳の 風とたはむる 点と線 柳芽がしなやかな曲線を描き、シャワーのように少女のブロンズ像にふりそそいでいます。しばらくぼくは、この少女の像を独り占めしたような幸せな気分でその場にたたずんでいました。「好き笑いは、暖かい冬の 陽ざしのようなも…

木魚歳時記 第342話

畑鋤て 宿るいのちの 自由席 ほんとうは「耕して虫が一匹死にました」としたかった。でも、それでは俳句としておかしい?でも、、こんな口語体の「一行詩」みたいなものがぼくのアンソロジー(詩歌集)としてぴったりです。いずれはその方向へ・・・そんな予…

木魚歳時記 第341話

けころがる つばき拾ひて 転校生 「半落る」とは、落ちて生々しい 椿の意味です。しかしほんとうは、ぼくの青春時代のことでもあります。ぼくは、小学生・高校生のとき3回も「落第」をしました。いまでもそのことが頭にこびりついていて、ときおり夢に見ま…

木魚歳時記 第340話

水温む 錆びて開かぬ 私水栓 「私水栓」とは、個々の家庭用に設けられた止水栓のことです。春がやってきて、草木が芽ぶきき、水温むころになっても、吾が「蛇口」は錆びついたまま・・・・ 「煩悩を只捨てなんと思うなよ 渋柿すらも甘くなるぞよ」(佐藤 勇…

木魚歳時記 第339話

春雷の 逸れて比丘尼の 夕諷経 雷は、ふつう夏に発生するものです。しかし、春、寒冷前線の通過するとき起こることもあります。夕暮れに、突然、ビリビリとくると尼公上人ならずとも、驚かれるのはとうぜんです。幸いなことには、雷公はすぐに他所へと行った…

木魚歳時記 第338話

病弱の 魚休ませて 水温む ブラック・ジョークでもありませんが「魚休ませて」とは、五位殿の腹におさまった小魚のことです。どうもうろん臭くてどん欲そうな・・五位殿をみると、つい、ぼくのイメージとだぶってしまいます。 「わしらには食うことよりも大…

木魚歳時記 第337話

公園の なまけ時計や 水草生ふ ぼくの体内時計はちぐはぐです。でも、小川の水性植物はごまかしがありません。腐葉土ばかりとおもっていましたが、いつか流れの中に、骨太の「水草」(みくさ)が大きくなっていました。やがて美しい花を咲かせるでしょう。 …

木魚歳時記 第336話

春隣 地球の上に 花一つ 「地球の上に・・・」とは大げさです。しかし、腐れ落ち葉をもたげて、春の花が大地に芽ぶくのを見ると、そんな表現がぴったとします。子どものころ見た「石に咲く花」(ロシア映画)を、なぜか思い出していました。 「誰でも顔の中…

木魚歳時記 第335話

妄想の かぎろひ始む 自分流 冬のあいだ閑散とした植物園も、はや春の訪れが感じられます。人影のまばらな広場には、陽炎(かげろう)がゆらめき、木陰にはベンチが一つ、人恋しげに坐っていました。 「ぱさぱさに乾いてゆく心を、 ひとにせいにはするな み…

木魚歳時記 第334話

かげろひて 夕日に消える はぐれ鳥 陽炎(かげろう)といえば、めらと燃える激しいものを想像します。しかし「うすばかげろう」のようにはかないもの、春の微妙な大気の「ゆらぎ」などまで含めて、もっと広い意味に用いられるようです。嘴太鴉が一羽かぎろい…

木魚歳時記 第333話

老納も 覗き込むなり 紅椿 「老納のさっさと掃きて落椿」こんな名句があります。しかし、ぼくはこんな達観した心境にはなれません。他の人たちがするように、それもなるべく落ちかけ崩れかけの椿の花をさがして、まじまじと覗き込んで帰ってきました。 「ひ…

木魚歳時記 第332話

これやこの 魔女のアイテム 金鏤梅 「金鏤梅」(まんさく)は満作と書きます。豊年満作のようにたくさん、春一番に「まず咲く」ところから名付けられたようです。気温にデリケートな花だそうですが、偶然、満開の「まんさく」に出会えました。 「今、生きて…

木魚歳時記 第331話

名刹の はぐれ化鳥 白椿 椿は、ぼとりと、いさぎよく落ちるものとはかぎりません。黄色くしわしわにひからびて、まだ、しぶとく枝にしがみついている花も沢山あります。それは、まるで死んだ鳥のように、化鳥(ばけとり)のように、まるでぼくの生きざまのよ…

木魚歳時記 第330話

怪し影 そびらに迫る 雛遊び 揚句が大黒さんの心中と察するならば・・・ぼくの願望は「ゆるゆると女雛に迫る翁かな」となります。こんなバーチャル・ナンセンス(仮想的虚構)の廃句をこねまわすのがぼくのアンソロジー(詩華集)です。「春風を以て人に接し…

木魚歳時記 第329話

鳥帰る 中山七里の 深碧 岐阜県の騨川ぞいの金山から太田までの28キロを「中山七里」と呼んぶそうです。冬鳥たちが北の国に帰ったあと、奇岩をぬって流れる水は濃い碧(みどり)色でした。 「ただ過ぎに過ぐるもの、帆かけたる舟。 人の齢。春、夏、秋、冬…

木魚歳時記 第328話

漆黒の ほかにものなし 春の雨 夜中に、ふと目覚めると、ガラス窓の外は春の雨の気配が。「ほかに音なし・・・」とあえて重ねてみようかとも思いましたが、やはり揚句のほうが、春の雨が音もなくそっと忍びよる気配がうまく表せるようで? 「すずめはすずめ…

木魚歳時記 第327話

月ヶ瀬は 梅一式の 鳥瞰図 紅花染の原料となる「烏梅」(うばい)は、元弘の乱で月ヶ瀬に落ち延びた後醍醐天皇の女官・園生姫が製法を教えたのが始まりです。梅林の名所も、もとをただせば「烏梅」を生産する生活の手段でした。 「われわれがわれわれの運、…

木魚歳時記 第326話

暮なづむ 姉三六角 なごり雪 夕暮れになごり雪が京町家のあたりを舞う風景をゲットするのは、いくら凝り性のぼくでもむつかしい。そこで京の「かぞへ唄」などぴったりする豆八姐さんのイメージに登場をねがって、ずぼらな「語呂合わせ」をすることにいたしま…

木魚歳時記 第325話

春来ると 底の鯉など 話しける 判じ物みたいですが、右の写真をよ~くご覧ください。たしかに鯉らしきものが・・・この写真(「底の鯉など」)を撮るのに小半時を費やしました。こうなるとぼくはよほど暇をもてあましているようですが、そうでもありません。…

木魚歳時記 第324話

白梅の にはかに怪し 闇の色 白梅は一見すると目立たないようですが、その気品といい、芯のつよさといい、けっして紅梅にひけはとりません。しかし、ならべて咲いていると紅梅の「あく」の強さには負けてしまいます。「クソッ」と一歩引いていた白梅ですが、…

木魚歳時記 第323話

春浅し 脳にざらつく 電子音 バチがあたりました。いくら「ロマン」と「いちびり」と「スケベ」がトレードマークのぼくでも、すこし「いちびり」すぎました。冷腹になって一週間ほどくにゃ~としていました。熱ヶと悪寒のとき、あの地下道でピーンポンと鳴る…

木魚歳時記 第322話

一輪の 万景しのぐ 梅の花 ぼくの寺には紅梅があります。一月の中旬から咲き始め、錆色の風景の中で異彩をはなって叫(おら)んでいます。ぼくは、壮大な月ヶ瀬梅林(奈良県)を遠景で眺めるのもいいですが、蕾一つ花一輪をまじか見るのがもっと好きです。 …

木魚歳時記 第321話

木曽殿の おつむさすりて 涅槃西風 再度「義仲寺」へ行ってきました。今は昔となりましたが、31歳を末期に時代を駆け抜けていった木曽義仲が近江の粟津で最後を遂げたときも、西方浄土より吹くという涅槃西風(ねはんにし)が訪れたでありましょう。 「仏…

木魚歳時記 第320話

春近し 動きだしたり 夜十郎 『碑夜十郎』とは時代小説の題名です。記憶喪失の主人公が墓場で素っ裸になって寝込んでいたところを任侠肌の姐さん助けれれ、そこからこの物語は展開してゆきます。ぼくが墓場で狸寝入してもカラスにつつかれるのがおちでしょう…

木魚歳時記 第319話

冴返る 石のへこみや 二寧坂 或人曰く「あの人は石橋を叩いて渡らん人や」。それはぼくのことです。そんなぼくでも、春来るとなれば心も騒ぎます。今、人物デッサンに熱中しています。それは瞬間(スケッチ)無我夢中(無心)になれるからです。 「学ぶこと…