木魚歳時記第4451話

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 十二月二十八日の事で、折から寒風が激しく火は風を呼んで一つの火が八方の寺々に吹かれて飛び広がった。宗徒の勇気ある者はみな奈良坂や般若寺で討ち死にしていたから、防火に努める者もなく、生き残って歩ける者は猛火を見返りながら、吉野や十津川方面へ逃げ急ぐばかりであった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)1100

      僧の子の僧に供へし草の花

 「ボクの細道]好きな俳句(2192) 京極杞陽さん。「美しく木の芽の如くつつましく」(杞陽) ほんとうにそうです。春芽が生まれ、夏花ひらき、秋実を結んで、冬根を育む。「花蝶を招き 蝶花を訪ねる」この良寛禅師のお言葉が胸にせまります。

虫が鳴いている
いまないておかなければ
もう駄目だというふうに鳴いている
しぜんと涙をさそわれる 
(八木重吉)