木魚歳時記 第219話

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虻一つ 湯船の壁に 死んでいた

 観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)は、「観音経」(『法華経・観世音菩薩普門品」)に説かれる、慈悲と救済を特色とする菩薩のことです。また『無量壽経』(むりょうじゅきょう)では、極楽浄土の阿弥陀仏(あみだぶつ)と、「観音」(かんのん)、「勢至」(せいし)の両脇侍をもって、「弥陀三尊」(みださんぞん)と称されます。

 古来、インド・中国・日本で「観音信仰」が盛んです。日本では、飛鳥以来、仏教芸術に観音像が描かれれ、中世以降、浄土思想の浸透により、来迎図(らいこうず)にも描かれるようになります。また、観音三十三身に因み、観音三十三霊場めぐりなど、現世利益的な信仰形態として庶民に最も親しまれた菩薩さまといえます。

 こうした仏教美術庶民信仰の中で、観音菩薩が「女性像」として描かれるのは、慈悲・救済の菩薩ならばこそといえるでしょう。
 
    「樟若葉 樹海にうもる 祇園閣」