木魚歳時記 第1197話

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清閑寺

 昔、清水寺のそばに青閑寺(せいかんじ)という寺があった。この寺に真燕(しんえん)という修行僧がおった。或る日、真燕さんが歩いていると、向うから一人の女の人がやってきたそうな。白くすき通るような肌と、長い髪をしたそれは美しい女(ひと)じゃった。真燕さんは、胸が高鳴るのを覚え、「あの、清水寺へはどのように行けばよいのでしょうか」と、口任せのことを訊ねてしまったのじゃ。するとその女(ひと)は、真燕さんの顔をじっと見ながら、「見るにだに迷う心のはかなくて、誠の道をいかで知るべし」。それは、修行中の僧が、女の人の心を惑わすようなことをいっては、本当の仏道を見つけることはできませんよ。女の人はそういって去っていったそうじゃ。
歌の中山:清閑寺 : 東大路通り清水口東入る

    高僧を孵卵器に入れ雨安居