木魚歳時記 第1189話

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随心院

 昔、小野小町(おののこまち)というたいそうに美しい歌人がおったそうな。その小町に深草少将(ふかくさのしょうしょう)という武将が惚れてのう、「百夜通えばあなたのものになりましょう」。という小町のことばに、深草から山科まで、五キロの夜道を通いつめたそうじゃ。やがて、百日目となるその夜はひどい吹雪じゃった。それでも少将は、小町のもとへと急いだそうな、しかし、しんしんと降る雪に埋もれ、少将は小町のもとにたどり着くまえに息が絶えてしまったのじゃ。悲しみにくれた小町は、九十九個の木の実を家の周りに埋め、生涯を独身で暮らしたということじゃ。山科にある随心院(ずいしんいん)は小町の邸跡と伝えられる。
隋心院:JR山科駅下車

     祭衣の袖にこぼるゝ男癖