老僧の うしろに目あり 夏安居
琵琶洞の妖怪
戻った猿の話では、四、五十里も行くと<琵琶洞>と記した洞窟があり、そこに「白い蛾が、翅をひろげて待っています。」と、張り紙がしてあったそうです。
いちびりの若猿たちが飛び込むと、うるわしの笙歌(せいか)、山海の珍味、ぽちゃぽちゃの桃尻娘に囲まれて、きぬものうすものはらりとまとい…これぞ月界の嫦娥(こうが)、九天の仙女、ゾッとくる美女が胡坐していたそうです。
それから、三日三挽、いや、四、五晩も、ゾッとくる美女、つまり、女妖怪の親分と、大勢の桃尻娘たちと、若猿四、五匹に、なにがどうあったのか、そのことはともかくとして…やがて「ほ~さん」のように腑抜けた一匹が、小休止に洞窟の奥で発見した怪とは、四、五百匹の<猿の塩漬>、つまり貯蔵品であります。ゾッとした若猿たちは、親分と桃尻娘たちの目を盗み逃げだしてきた…これが顛末であります。