木魚歳時記 第127話

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かめ眠り 螢わきだす 椿山荘

三星洞

 さて、補陀落(ふだらく)山にたどりついた美猴王であります。その景色の美しいこと、それは「天下に景たり…」がぴったりですがそのことはさておき、さっそく「不老不死」を修めたという神仙の棲家を探すことにしたのです。

 樵に尋ねると「西に、四、五十里も行くと洞窟があるから、そのあらりを探してみたら…」と教えてくれました。そのあたりは、千株の老柏(ひのき)が鬱蒼と茂り、万節の修竹(たけ)は雨を帯びて高く、奇花あたりを覆って咲き競い、中空には仙鶴羽ばたいて啼く…と、まことに極楽を見るような景色であります。
 そばに、洞窟があり<斜月三星洞>とありますから、美猴王は門を叩くことにいたしました。すると奥から、そこいらの凡の<ぼん>とは違う仙童(わっぱ)が飛びだしてきます。