木魚歳時記 第39話

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老木に 鳴き固まりて 秋の蝉

 「無量精舎の鐘の音(ね)に、諸行無常の響きあり、百日紅の花の色、和尚転落の兆(おめでた)を顕す」。ぼくの寺の一隅にある「猿すべり」(百日紅)の下に、この観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)の像(写真)があります。

「菩薩」とは、自身の悟りを求め、さらに、その悟りの内容を実践する者を指します。多くの菩薩の中で、観世音菩薩は「慈悲」をもって、すべての人を救済する、とされます。すべての人を救済するとは、すなわち、現実に平和社会(「僧伽」(さんぎゃ)を建設することです。かぎりない平等社会の建設、その実現をめざすのが、観世音菩薩の「慈悲」といえます。

 ぼくが、辛うじて「和尚転落のおめでた」から踏み止まれるのも、この石仏さまの「慈悲」のお蔭です。