木魚歳時記第4782話

「鎮西よそなたの考えは?」
「どうして異ならず同じとは申せましょうか。釈尊とも仰ぎ参らすわが師と安波の介の念仏とを」
「はてね」と法然は顔色を曇らせて、「鎮西ほどの者がまだそんな考えでいやったか。阿弥陀仏よ、この不びんなわが身を救い取らせ給えと願う安波の介の念仏と、わが念仏とにどこにどんな差別があると申すのか。鎮西よ、これはそなたの帰国に当っての家づとにわがはなむけに贈るかたみの言葉だ」
 と、法然は人々を驚かせた。というのは、安波の介は婦女売買で渡世する、希代(けだい)の女好きで、それも嗜虐者(サデイスト)として仲間から爪はじきされていたから。
(佐藤春夫『極楽から来た』)1416

                六月は酸味の効いたライム酒               

 何の変哲もない「つぶやき」がぼくの俳句の大部分です。しかも、ライム酒を句材に俳句を作りたい! そんな願望からできた俳句です。ぼくの俳句は、こうした「つぶやき」で始まり「つぶやき」で終わります。それだけのことです。