彼は道心堅固で、穢土(えど)を厭(いと)う心が深く、常に涙ぐんで物思いに沈んでいる様子であった。悲しい身の上でまた病弱な体質であったのではあるまいか。西山の善峰で病死したが、その臨終に、名号を唱えること九へん、上人は枕べで、
「もう一ぺん」
と勧めたので、彼は苦しい息の下から高声念仏をもう一ぺん唱えると、やがて息は絶えた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)1400
9 蓮の実の飛んで三千大世界
「三千大世界」とは、「三千大世界千世界」のことです。敗蓮(やれはす)の言葉があります。しかし、いくら迫力のある蓮の実でも「三千大世界」に至ることはとてもとても! 仏教が説く「三千大世界千世界」とは、つまり、仏教の説く古代インドの世界観を説くのでしょう!