リスの夫婦
仲の良いリスの夫婦がいました。秋になり木の実が熟れたので、夫婦は、巣のそばにある木の空(うろ)に、木の実を蓄えることにいたしました。やがて、空(うろ)は木の実でいっぱいとなり夫婦は満足でした。ところが、間もなく旱(ひでり)がやってきて、蓄えてある木の実は乾燥して、もとの半分くらいの量となってしまいました。それを見た雄のリスは雌にいいました「おまえが木の実を食べたのだろう」。身におぼえのない雌は「わたしは食べていません」。そんなことでリス夫婦はいさかいとなり、あげくのはて、雄のリスは雌を巣から追い出してしまいました。さて、その翌日から雨がつづき、湿った木の実はもとの分量に戻りましたが、雌が巣にもどることはありませんでした。(『比喩経』)