賢い鵞鳥(がちょう)
檻(おり)の中で、人間に食われるために沢山の鵞鳥が飼われていました。鵞鳥が檻(おり)のスキマから外に出ないように、もし、出たとしても飛べないように羽根は刈り込まれていました。或る鵞鳥は考えました。丸々と肥えた鵞鳥から消えてゆく。人間に食われているにちがいない。でも、餌を食わずにいると自分が死んでしまう。そうだ、太り過ぎず痩(やせ)過ぎないように「ほどよく」餌を食べることだ。この鵞鳥は、その日からこれを実行しました。そうして数日がすぎて羽根も生えそろい、体形も檻から抜け出せるくらい細くなったのを見計らい、大空へと飛び立って行きました。(『修行道地経』)