木魚歳時記 第1011話

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ひとりじゃないんだよ
ひとりじゃないんだよ
生きる そのことが
にょらいの生  (木村夢相)

 京都神泉苑(しんせんえん)のほとりに一人の老女が住んでいた。空也上人(くうやしょうにん)はときおり、その老女が欲するままに生臭物などを買いもとめて与えていた。
 ところがあるとき、老女は乱れてものがいえない。わけをたずねると・・「精気がうちにこもりどうしようもない」という。さらに驚いたことに・・「空也上人と交接したい」という。上人は、しばらく考え意に添うようそぶりで示された。すると老女は深く嘆息(たんそく)し「我は神泉苑に棲む老狐である。空也上人こそまことの聖(ひじり)なり」そういい残して姿を消したという。

     懐中にあぶらとり紙夏来る