木魚歳時記 第172話

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やわ肌や 後生大事と 大根抜く

 蛇(季語)は俳句でも多く詠まれます。秋蛇、蛇の衣、蛇の殻、蛇穴に入る、(蛇の)穴まどひ…などです。ぼく自身「蛇穴」は見たことがありません。

 動物の中には、冬、生命現象を休止して、いわゆる「冬眠」に入る種類があります。これは、厳しい自然を生き抜く知恵でしょうか。とりわけ蛇は、冬前に穴に入り翌春穴から出て、それから脱皮を繰りかえします。こんな蛇に「死んで再び生まれ変わる」神聖な生き物としての、特別の思いがあったとしても不思議はありません。

 子どもころ、寺の「たたき」の奥に納戸があり、昼でも薄暗い上段に什器類が置いてありました。或るとき、おふくろが叫ぶので、とんでいくと「三方」(仏事に使う盛り台)の上に、蛇がとぐろを巻いておりました。蛇は、その形状もさることながら、こんなミステリアスな習性をもつので、わたしたちの興味が衰えないのでしょうか?

   「土壇場で おやじ成仏 穴まどひ」