木魚歳時記 第171話

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しぐれつゝ 風の戯むる 裏参道

 昔は「いんきんたむし脱腸早よ治せ。」と、みんなで囃しながら遊んだものです。さて、白癬菌(はくせんきん)が、頭に登ると「しらくも」。股間に巣くうと「たむし」。足さきに陣取ると「水虫」となります。ぼくも、昔、この虫たちのご厄介になり、二方面を占拠されました。ついには「爪白癬」に食い込まれて往生をいたしました。

 ところで「引金」(いんきん)とは。坊さんが、葬式の引導(いんどう)に用いる仏具(鳴り物)のことです。チ~ンと音立てる小さな鈴(りん)のことです。もちろん、「引導」とは、葬儀のとき、坊さんが、偈頌(げじゅ)・法語(ほうご)を唱えながら、死者をこの世(迷界)から、あの世(浄土)へと導くことを指します。

 師僧(おやじ)の使い古した「引金」(いんきん)を、チ~ンと鳴らすとおやじの面影が浮かびます。こんなセンチになるのは、ぼくも歳を取ったせいでしょうか?

   「癬虫の そろり這いだす 置炬燵」