層塔を 薄墨いろに 春の雨
釈迦(しゃか)族
いまから2500年(紀元前5世紀前半)ほど昔、北インド・ヒマラヤの南麓(現在のネパール領カトマンズの付近)に、タラーイという盆地があり、サキャ(釈迦)族という部族が住んでおりました。
この部族の住む地域カピラヴァッツ(迦比羅衛)は、東西に80キロ、南北に60キロという小さなものでしたが、近くには巨大な軍事力を誇るコーサラ国を始め、大小16を超える部族があり、まさに群雄割拠する状況にありました。事実、サキャ族はこのコーサラ国に隷属することになりやがては滅ぼされる運命にあったのです。
こうした状況の中で、サキャ族の王子として誕生したシッダルタが、幼少時代から青年期にかけて、どうような考え方をもち、どのような行動をみせたのか、仏伝で語られるエピソードの中に探ってみましょう。