木魚歳時記 第1892話

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蓄える

 或る所に愚人が住んでいました。ところで、或る時、愚人の家に大勢の来客を招待することになりました。そこで愚人は、来客に何を振舞おうかと思案いたしましたところ、新鮮な牛乳をご馳走することにしたのです。しかし、大勢の客に振舞うには大量の牛乳が必要だし、牛乳を容器に蓄えると新鮮でなくなる。それに、毎日、牛乳を搾(しぼ)るのは面倒でもある。そこで、愚人は「牛の腹の中に牛乳を蓄えよう。」と考えつきました。そして、客人が訪ねて来たときに一度に搾(しぼ)るのが一番だと考えたのです。それから、一ヶ月ほどして来客たちはやってきました。愚人は、ほくそ笑(え)みながら、乳搾りにとりかかりました。が、しかし、乳の枯れた乳牛からは一滴の乳も搾(と)れませんでした。(『百喩経』)

       甚六のさて見たといふ鎌いたち