木魚歳時記 第1893話

f:id:mokugyo-sin:20140225034621j:plain

塩を食う

 やはり愚人がいました。或る日、愚人は、友人の家でご馳走になりました。ところが、出された料理が甘すぎると感じた愚人は、そのことを友人に訴えました。そこで友人は、愚人のために、塩をふりかけるようさし出しました。ところで、塩を少し料理にふりかけると、料理が大変おいしく感じられたのであります。そこで愚人は「塩というものは料理にふりかけると料理が大変に美味しくなる。」と思い込んでしまったのであります。愚人は、それからというもの、そのことを忘れることが出来ず、自分の家に戻ってからも「塩が多ければおおいほど、一層、料理がなお美味しくなるだろう」。と勝手に思い込んでしまいました。以来、愚人は、一切の料理に多量の塩を用いました。そして、やがて、大病に罹(かか)り死んでしまったということです。(『百喩経』)

       低空を北に向かひし冬かもめ