木魚歳時記 第1884話

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ケシの実

 突然に息子を亡くした若い母親がいました。母親はどうしても息子のことをあきらめることができず、日夜、泣き暮れ泣き明かしていました。が、それでもどうしようもなくなくなり、ボサツさまのところにやってきたのです。「どんなことでもいたします。どうか息子を生き返らせてほしい。」と。母親の願いにたボサツさまは答えられました。「生き返る方法を教えてあげましょう。しかし、その前に、村中の家を尋ねて、ケシの実一粒もらっていらっしゃい。ただし、これまで一度も死者を出したことのない家のケシの実でないといけません。」と。そこで、母親は、村中の家をつぎつぎとまわってみました。しかし、ケシの実はどこの家にもありました。ところで、いまだ死者を出したことのない家はどこにもありませんでした。母親はボサツさまのおっしゃられた意味を悟り、以来、熱心な仏弟子となったということです。(『雑比喩経』)

        閂を外す軋や冴返る

     閂(かんぬき) 軋(きしみ) 写真:「西山 喬・由良展」より