ワニと猿の王
或る日、樹の上で昼寝をしている猿の王を見て、池に棲むワニが急に猿の肝(きも)が喰いたくなりました。そこでワニは、猿の王に「むこう岸に熟れたマンゴーの実がありますよ、私がつれていってあげましょう」と猿の王を誘いました。猿の王を背中に乗せたワニは池の中ほどまでくると「ところで猿さん、あなたの肝は新鮮でしょうね」と探りをいれました。そこでワニの悪巧みに気づいた猿の王は、そ知らぬ顔をしてこういいました。「そうだ、俺は、肝(きも)を木の枝に干し忘れて来た、肝が乾燥しないうちにすぐ取りに戻らなくては」。そういってワニにもとの岸に送ってもらい、陸に上がるやすたこら行ってしまいました。 (『佛本行集経』)
恋猫の二つの耳と二つの目