木魚歳時記 第3515話

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 というのは、この世界では空気や水のなかにすべての栄養素があるから、特別に飲食の用意をする必要もなかったのである。こうしてこの国の人々の一日が楽しい朝の散歩をかねた朝食ではじまるのである。
(佐藤春夫『極楽から来た』)218

      炎天を裏から剥す悉皆屋

 「ボクの細道]好きな俳句(1266) 平井照敏さん。「生き作り鯉の目にらむまだにらむ」(照敏) いつか、岩場で「ちぬ」つまり黒鯛の大物を釣り上げられるのを見ました(テレビ)。目をカッと見ひらいて、鯛の「にらむ」ような姿が忘れられません。しばらくは睨み続けるでしょう。ボクも、目つきが優しい方ではありません。これからは「和顔愛語」に心がたいと思います。

木魚歳時記 第3514話

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 極楽の人々は、朝早くから、花を盛る器を持ち出し、それを満地の曼荼羅華を採り持って、アミダ仏を初め十万億といわれる他の世界の諸仏たちに供養をささげたのち、すみやかに極楽浄土に帰って来て、七宝樹林の並木のなかを散歩して朝食をとる」
(佐藤春夫『極楽から来た』)217

      短日をだましだましに掛接屋

 「ボクの細道]好きな俳句(1265) 平井照敏さん。「万緑や鴉の目玉もりあがる」(照敏) 照敏さんの作品はことばの選択が美しい。なるほど、鴉は、瞬(まばた)き、つまり、白目と黒目のうごきに特徴があります。たえずまばたきしています。そこをとらえて「もりあがる」と表現するところが凄い。万緑の色彩感の中で「緑・黒・白」が効いています。

木魚歳時記 第3513話

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「このアミダブツの極楽国(ごくらくこく)は天然の微妙な音楽が絶えずながれひびき、大地は黄金延べ(別に大地を瑠璃と説くのもあるが、これはこの国の半ばを占めた、水を大地と見てのことで別にむじゅんはない)ここでは一日に夜明け、日中、日のくれ、宵の口、夜ふけ、夜なかと六度、天上(てんじょう)の曼荼羅華(まんだらけ)が雨と降る。
(佐藤春夫『極楽から来た』)216

      芋虫をつかみたちまち虫垂炎

 「ボクの細道]好きな俳句(1264) 平井照敏さん。「雲雀落ち天に金粉残りけり」(照敏) まさに、あの雲雀(ひばり)の形状からすると「金粉」(きんぷん)を散らしそうです。ひばりといえば、揚げひばりの作品が多いですが、落ちひばりの動きをとらえ「天に金粉残りけり」とは格調のある作品です。

木魚歳時記 第3512話

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 どちらにせよ住宅はすべて国営だし、貨幣制度のないこの国では家賃などというものもない。住宅難の結果はぶた小屋のようなうら長屋にも月々大金を払うことを思えば、これだけでも、極楽はたしかに楽しい国に相違ない。
(佐藤春夫『極楽から来た』)215

      うしろより液化始まるなめくぢり

 「ボクの細道]好きな俳句(1263) 平井照敏さん。「遠足をしてゐて遠足したくなる」(照敏) ふむ。気持ちはよくわかります。遠足をしているときはしんどい。しかし、女性を交えた遠足は楽しい。又、したくなります。ところで、老人ともなると「遠クソ」の用意、つまり、失禁ガードのことが? ああ、ボクもいずれそのうちに・・(汗)。

木魚歳時記 第3511話

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(三)貴賤の別もなく、資料に余りのあるこの国では、家々は建築家の楽しみ仕事としてみな王宮なみの金殿玉楼造りが多かったが、なかには建築家の好みでごく質素なものもあり、それはまたそれで美しかったから、好んでそれに住む趣味の人もいた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)214

      海猫の鳴くときなぜか人の死ぬ

 「ボクの細道]好きな俳句(1262) 平井照敏さん。「金色の老人と逢ふ暮れの町」(照敏) 無季俳句? それはさておき、龍之介さんの『杜子春』(とししゅん)の物語を思い浮かべました。日暮れの街角で不思議な老人と出会う・・さて、「金色の老人」出会うとは、なん情緒的な場面でありましょうか。ボクたち夫婦も、寓居で、ヂヂ色、ババ色の老人とならないように努めたいものです。

木魚歳時記 第3510話

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 家々には看板などというものは一つもないらしい。ここではインチキなものを売って金をもうける必要などないためであろう。
極楽はそういう真善美の世界で、仏教のユートピアなのである。
(佐藤春夫『極楽から来た』)213

      銀蠅の腐りつゝある食品庫

 「ボクの細道]好きな俳句(1261) 田川飛旅子さん。「雁仰ぐ身体の中に水の音」(飛旅子) おお、格調高い作品と出会いました。雁渡る風情を目にして、干からびかけていた「身ぬちの水位」を取り戻されたというのでしょう。こうした抒情俳句が詠めるようになれば、句材も広がり、句作も楽しくなるのでしょうが・・ボクは、人事俳句というか心象俳句に興味を持ちすぎていけません! 

木魚歳時記 第3509話

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 池に臨んで水面にさし出た楼閣がある。池の中には車輪大の蓮の花が咲いて青、黄、赤、白とそれぞれの色に光照りそい、目もあやに香気はほのかにすばらしい。この花というのはただの花でではなく、仏教の(すなわち真理の)端厳、荘厳を象徴して咲き出したものである。
(佐藤春夫『極楽から来た』)212

      蠅が来てなにかぶつぶついつてゐる

 「ボクの細道]好きな俳句(1260) 田川飛旅子さん。「本を買い苺の箱と重ねもつ」(飛旅子) ボクは、本を買う習慣がありません(読みません)。しかし、わかります。本はカバーしてくれますが、袋詰めはしてくれません(フツー)。ですから、本を小脇にかかえ、買い物袋(イチゴ)を下げて歩くのは案外難しい? ところで、ボクも、もっと本を読んでおけばよかった! ブログして思います。