木魚歳時記第4876話 

 それにしても既に半世紀以上も我々の世界から遠ざかって、不意に今ここに現れた彼は福も禄もなくいたずらに寿のみに恵まれて、今八十を幾つかすぎた老体でいつ死ぬとも知らない落魄(らくはく)の身で、今はだれひとり知るべもなく、ただ父母の墓のあるばかりの故郷の地に死処を求めて漂泊する途上なのである。
 彼も若い昔は、人並の望みを抱いて滝口や北面の武士を志し権大納言藤原宗輔をたよって一時はその家人ともなっていた。佐藤春夫『極楽から来た』)

        蜩の畢竟空と澄わたる 畢竟(ひっきょう)        

 「蜩」(かなかな)は秋季となります。小3の頃「蜩」(かなかな)を追って、御苑の遠くまで行ったことがあります。「空」(くう)とは、つまり『般若心経』(はんにゃしんきょう)の「意」(こころ)を指します! つまり「悟りの境地」のことです!