木魚歳時記第4868話

 謙虚な上人もさすがに凱旋将軍の万歳を聞くような気持ちを禁じ得ないうちにも、ふと、六十年前、美作(みまさか)の故山を出ではじめて都にちょうどこのあたりで、法性寺前(さきの)関白忠通公の牛車の盛大な行列に出会った懐かしい思い出をも、その同じ道筋をこの朝こうして通るわが身をも、夢のように思うのであった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)

        吾輩はあとづさりせぬ御器かぶり

 「御器かぶり」は夏季です。油虫のことです! 古語の噛(かぶり)の字を配することも! それはともかく、油虫、ごきぶりは後戻りができない「残念な生きもの」だそうです(笑)。ですから、出会った時は、ぼくたちが退却してあげましょう(笑)。