山では場所によって、大小の木があるいは根こそぎになり、あるいは枝や幹が折れ傷つき倒れていた。しかし人間や鳥獣の倒れているのは一つも見かけなかった。定明は念のために山の洞へも行ってみた。
どこにももう父をたずねる所が無いような気がした時、定明は母の実家へ行ってみようと思いついた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)13
こほりどけ男背中の嘘くささ
「ボクの細道]好きな俳句(1058) 能村登四郎さん。「妻なきを誰も知らざる年わすれ」(登四郎) 年わすれとは忘年会のことです。現今のように「喪中につき賀状拝辞」。そんな知らせはせずに妻を亡くしたことを誰にもいわない。そんな男もいたのでしょう。妻の居ないことを誰も知らない。そして忘年会はワイワイと盛りあがっていきます。