木魚歳時記 第3319話

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しかし定明は父が家出の前に一心に書いていたものがこの手紙や『法華経』であったと思いあたり、そうして去年の二百十日の風は旭川ぞいを、那岐(なぎ)の南を真庭から日野へ街道ぞいに吹き荒れて通り抜け出雲の大風になったと人々が語り伝えたのを思い起し、父は風に乗って果知らず吹かれて行ったのだと知った。父の手紙は定明に脱出して来た故郷の人々や弓削の庄のその後の消息をそぞろに思い出すよすがとなったが、また誤って人を討ったのではないかとの疑いもこの時生まれた。彼は叔父のいったとおり悪い夢を追ったのだと思い知った。
(佐藤春夫『極楽から来た』)25

     耕せば地虫いつぴき死にました

 「ボクの細道]好きな俳句(1070)  能村登四郎さん。「季すぎし西瓜を音もなく食へり」(登四郎) 旬(しゅん)の物はうまい。とりわけ炎天の下で、冷えたスイカを食するの美味しい。行儀作法などおかまいなしに音立てすするのがうまい食い方であります。しかし、季節外れの西瓜(すいか)ともなればこれは別なのでしょうか? それとも、「季すぎしスイカ」に、作者は、何か、比喩的な意味を伝えたいのでしょうか(汗)。