木魚歳時記 第1896話

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聖者の徳

 王さまの乗った馬車と、聖者の乗られた馬車が、偶然、狭い道で鉢合わせをいたしました。双方の馬車がすれ違うには、どちらかの馬車が道を譲(ゆず)らねばなりません。しかし、馬車の馭者(ぎょしゃ)はそれぞれ道を譲ろうといたしません。そこで、二人の馭者は相談いたしました。双方の馬車に乗った主(あるじ)の徳くらべをして、優れた方が道を譲ることになりました。王の馭者はいいました「相手が強けりゃこちらも強い。これがわれらのご主人さまだ。」と誇らしげにいいました。聖者の馭者はいいました「よくばる人なら慈善(じぜん)で諭(さと)し、うそつく人なら誠(まこと)で示す。これがわれらのご主人さまだ。」といいました。そこで、聖者の乗られた馬車が先に通ることになったということです。(『比喩経』)

       寂寞の熊野古道やしづり雪

            寂寞(せきばく) <『比喩経』の項>おわり