木魚歳時記 第1882話

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無常(むじょう)

 王舎城の近くに、蓮華という美人が住んでいました。或る日「やがて美貌は衰えるにちがいない。」そのように考えた蓮華は、釈尊(しゃくそん)の弟子となろうと決意し、釈尊のところに出かけることにしました。ところが、途中、池のところで水面(みなも)に映るわが姿を眺めたところ「やはり自分は美しい。釈尊のところに行くのはもうすこしさきにしよう。」と出家(しゅっけ)する考えを変えることにしたのです。ところで、その池のそばに、蓮華よりもさらに数倍も美しい婦人と出会い話込んでいたところ、婦人は、蓮華の膝にもたれ眠ってしまいました。しばらくして蓮華が様子を伺うと婦人はすでに死んでおりました。このあまりにも無常の姿を見た蓮華は、その足で釈尊のところに行き出家(しゅっけ)をしたということです。(『比喩経』)

      そのときは枯木のごとく逝きまする

                  写真:「西山 喬・由良展」より