木魚歳時記 第1881話

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無我(むが)

 或る処に怠け者の男がいました。男は、今日も仕事に就くことなく、池のほとりをぶらぶらとしていました。ところで、男がふと池の底に目をやると、黄金にひかるモノがあります「しめた、これは池の底に黄金が沈んでいるにちがいない」。そう考えた男は、池底を探しましたが見つかりません。しかし、岸にあがり水が澄んでくると、黄金に光るモノは確かに沈んでいます。そんなことを数回くりかえし、男は疲れ果て、岸で寝そべっておりました。そこへボサツさまが通りかかられたのです。男から話を聞かれたボサツさまは「池の上の樹の茂みを探してごらんなさい」。そういって去って行かれました。男がいわれた通りに樹の茂みを探してみると、果たして、黄金が隠されておりました。池の底の黄金とは、その影が水底に映っていたのです。(『百喩経』)

         薄氷の上の三千大世界

           薄氷(うすらひ)  写真:「西山 喬・由良展」より