木魚歳時記 第792話

f:id:mokugyo-sin:20131227091259j:plain

 京の繁華街のド真ん中に、妙心寺(みょうしんじ)という寺があるがのう。昔、この寺の住職(じゅうしょく)の母親が病気になり、好物の「蛸(たこ)が食べたい」と、いいだしたのじゃ。

    「念ずれば 花ひらく」(坂本真民)

 「坊主(ぼうず)が魚を買うのは・・」と、住職はためらったが、蛸(たこ)を買って持ち帰ったそうな。これを見た人が怪しみ「箱をあけて見せるように」迫まった。しかたなく箱を開けたところ、八本足のタコが、法華経(ほけきょう)八巻に変っていたそうな。不思議に思った住職が、さっそく、経文(きょうもん)をお唱えすると、母親の病気は、たちどころに治ったということじゃ。以来、妙心寺(みょうしんじ)は「蛸薬師(たこやくし)さん」として親しまれているそうな。<妙心寺:中京区新京極蛸薬師上ル>

     のどけしや女房もすなる高鼾