木魚歳時記 第176話

f:id:mokugyo-sin:20131217115335j:plain

夕映や 鬼門の空に 冬もみぢ

 家康の六男忠輝は、生まれながらに<鬼っ子>でありました。そこで家康はすぐさま忠輝を「捨てよ」と命じたそうです。でも、いくら恐ろしげな顔であっても、父親がわが子に対して、そんなことを思うはずがありません。おそらくなにか政治的な配慮が背景にあったのでしょう。

 事実、忠輝は25才で流罪となり、生涯免罪を受けることがなかったようでう。しかし家康は臨終のとき、信長ゆかりの名笛「野風」」を忠輝に与え「しぶとく生きよ」と諭したそうです。その家康の心中を察してか、いらい忠輝は一切の<しがらみ>から離れ、ますます<鬼っ子>ぶりを発揮してその生涯を終えたそうです。

 「いやな事には出会いたくない。」つまり、いやなことを避け、遠ざかろうとする、そのことで心の苦しみを背負い込む…仏教では、これを「怨憎会苦」(おんぞうえく)といいます。怨憎の裏側にある「真実」に気づき、表面にある怨憎を「すてる」ことが大事です。


   「一椀に 芋棒鱈の 四十年」