木魚歳時記 第169話

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殿は のっぽ猫背の 鉢叩

 「おもこ」つまり、想い出の女(こ)については前にも触れました。こんどは「おもこす」について。これは<行為>の終止形ではありません。「~だとばかり思い越す。」つまり<思い過ごす>の省略形なのです。

 さて「陰圧」(いんあつ)とは。陰部に発生する圧力?そんな妄想を「おもこす」のはスケベおやじです。実は、赤ちゃんがお母さんのおっぱいを吸うとき、上下のあごで乳頭をはさんで、口の中の<空き部分>をゼロにします。そうすると口の中に「陰圧」が生れ、おっぱいをスムーズに吸うことができるのです。

 「いま吸っているのは、わたしの赤ちゃんだ。」お母さんがそう感じたとき安らぎが生れます。それと乳房が「空」(から)になってゆく爽快感。これで授乳の行為が持続するのです。「わが身がそのままゼロになる。」これが仏教の説く「空」(くう)の教えです。赤ちゃんとお母さんの一体感、これが仏教がいう「涅槃」(ねはん)の境地です。

   「小春日や 花芯に惑ふ 雪隠虫」