木魚歳時記 第168話

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しぐれつゝ 黙に固まる 珈琲店

 「秘色」(ひそく)とは、青磁色のことです。釉(うわぐすり)を使わない陶器時代。窯の素地が灰をかぶり、灰のアルカリと素地のケイ酸が反応してガラス状となりました。陶磁器の誕生です。さらに、燃焼のときの酸素の濃度により、青磁色に発色することもわかりました。これを「秘色」と呼んだのです。偶然のできごとでした。 晴れた青空。澄んだ青い海。しかし「青い色」」は見えても、手にすることはできません。このように自然界で眼にする現象が、その「もの」の実体とは限りません。

 仏教ではこれを「色即是空」(しきそくぜくう)と説きます。青は好きだが赤は嫌い。白は善だが黒は悪だ。右は良いが左はだめだ…と、二者選択をしがちです。けれども「白黒」の実体を問い、「白黒」決着するのが重要ではありません。「白黒」にこだわらず、大らかな気持ちで暮すことが重要なのです。


    「しぐるゝや 忍ぶる恋は 背戸より」」