待合に 代診とあり 秋の暮
「物の怪」(もののけ)とは、支配者、体制側から葬り去られ、もの陰でうごめく霊・怨霊のことです。また、龍・河童・天狗など、自然への畏敬が生みだした想像上の妖怪を指すこともあります。
かって、小学校を舞台とした「学校の怪談」という映画がありました。古い木造の校舎を舞台として、その巨大な空間を占める、音楽室が、標本室が、長い廊下が、階段の下が、そして極めつけは、なんといっても「便所」が、物の怪が登場するにふさわしい道具立となっていました。
昔から、巨木には精霊が宿ると信じ、注連縄(しめなわ)を張り、お神酒を供える習慣があります。この「いのち」ある樹木から造られた建物だからこそ、そこに「物の気」(もののけ)が棲みついたとして不思議でありません。ウオッシュレットの水洗便所から「赤い紙がよいか、青い紙が好いか…」の怪談話は生れてこないのです。
「男あり 鵙の空音と 異名とる」