木魚歳時記 第164話

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暮六つの 外に音なし 虫時雨

 野坂昭如さんが書かれた『童女入水』という本には、「遠足は<えんそく>ではなく<えんくそ>である。つまり遠く行って糞(くそ)をすること。」とあるそうです。また「充糞」「約糞」「催糞」など、鬼気鼻に迫ることばを、容易にひねりだす昭如さんは天才です。

 さて、古代人は何を食っていたのか?遺跡から発見された「古糞」らしきものを調べ、研究対象とする学問があるようです。これを「トイレ考古学」と呼ぶのです。

 ところで「トイレ考古学」の副産物として、こんなこともわかりました。それは、古墳の厠(かわや)とおぼしきあたりから、鞭虫や回虫やサナダ虫の卵に混じって、大量の籌木(ちゅうぎ)つまり「糞べら」が発見されたのです。ぼくも子どものころ、思い余って使ったことがあります。これで野坂氏のいう「充糞」という言葉が、いかにも時代性と普遍性を帯びてくるから不思議です。

  「茜さす 野ゆき山ゆき 遠の糞」