木魚歳時記 第207話

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日輪や 黄砂に溶くる 平安殿

 極楽(浄土)は西方にある。それはなぜでしょう?

「閻浮提(えんぶだい)は日の出る処に生と名づけ没所に死と名づく(中略)。法蔵菩薩(ほうぞうぼさつ)はすでに成仏(阿弥陀仏となりて)西にありて、衆生を摂取したまう。」    (安楽集)

 仏教東漸(とうぜん)という言葉があります。インドで興った仏教(大乗仏教)は、シルクロードを通り中国や日本に伝わりました。これを逆に、シルクロード東端に位置する中国や日本から見れば、仏教の「西方渡来」となるでしょう。また、インド仏教の起源そのものも、さらに西方メソポタミア文明の影響が考えられます。このように楽園(幸せの国)の情報は、いつも、西の方角より伝わってきたのです。
 そんな難しいことをいわずとも、まっ赤かに燃える太陽が、鳥も、林も、川も、お家も…まっ赤かに染めて西の空に沈むのを見て。大自然の恩恵の中で暮らすわたしたちの祖先たちは、大自然の循環の中心となる偉大な太陽が西の空に沈むのを眺め、その方角に「幸せの国」ありと信じたとしても不思議はないのです。

    「春泥に かめ遊行する 白虎池」